日本食の風味を支える「だし」が、心身の健康機能を有することが最近の研究で明らかになっていることを受け、さまざまな味わい方が広まっている。
久原本家茅乃舎(福岡県久山町)のJR東京駅店(グランスタ丸の内)では、気に入っただしをその場で飲める「対面だしスタンド」や、だしを使った和食を楽しむ「汁や」が人気で、ランチタイムには行列ができる。
久原本家の広報担当者は、こう話す。
「汁やでは、博多雑煮セットや九州の豚汁セットなどを提供し、対面だしスタンドでは、さまざまなだしスープを提供するなど、だしの魅力をその場で味わっていただけるのが好評です」
久原本家は明治26(1893)年に、初代久原村(現・久山町)村長だった河邉東介氏が「久原醤油」として創業した。平成17(2005)年に、食文化を後世に伝える舞台として、レストラン茅乃舎を開業。同年、和食の風味を支える「茅乃舎だし」をはじめとした化学調味料・保存料無添加製品を発売した。
茅乃舎だしは、真昆布、鰹(かつお)節、ウルメイワシ、焼きアゴを粉末にしてだしパックに詰めたもの。みそ汁から煮物まで幅広く使える。
当初は通信販売でスタートしたが、だしブームに乗って、直営店を拡大。2010年には東京ミッドタウン店を出店し、3年後に「汁や」を併設してリニューアルした。現在では国内26店舗にまで販売網を広げたほか、米国でネット販売を手掛け、ベトナムにもレストランを出店している。
また、食品スーパーでも、こだわりのだしを扱う店舗が増えている。
関西や首都圏を中心にスーパーマーケット新鮮館「北野エース」を展開するエース(東京)は、店舗やインターネット販売で「こだわりのだし」を展開している。
「あご入りだし」は、焼津産本枯れ鰹節、熊本産ウルメイワシ、焼津産鯖(さば)枯れ節、国産焼きアゴ、宮崎産香信椎茸(しいたけ)、北海道産利尻昆布の6素材を使用している。
研究所で地道な試作品開発に取り組み、素材それぞれのうまみを最大限に引き出す「黄金比率」を生み出したという。
だしの効果に関しては、副交感系神経活動を上昇させることにより、リラックスや疲労回復などに役立つ可能性や、昆布などに含まれるアミノ酸の一種であるグルタミン酸が適度な食欲を刺激する一方、食後の満腹感を長持ちさせ、食べ過ぎを防ぐというダイエット効果も注目されている。(本誌・小島清利)
※週刊朝日オンライン限定記事