夏帆:そのときはどうされたんですか。帰られたんですか。
林:「もう新幹線ないもん」とか言って泊まりましたけど、すごくイヤな感じでした。あの大雪の中を「帰ってこい」って言ったのは、あのご主人、もういろいろ感じてたからじゃないですかね。
夏帆:だと思います。塔子が家を出るときにすでに感じていて、「もしかしたら帰ってこないんじゃないか」みたいな。
林:でも、わかるな。「もうどうでもいい。家には戻らない」という感じで雪が降るんですよね。女の人、一生に一度はああいう恋愛をしたいと思ってるんじゃないですかね。
夏帆:と思いますね。私自身も憧れます。
林:えっ、そうなの?
夏帆:自分が持ってるものをすべて捨てて愛する人のもとに行くという決断って、なかなかできないじゃないですか。自分だったらもっと現実的に考えちゃうだろうなと思って。だから憧れます。
林:あの旦那さんとは恋愛結婚だろうし、夫婦二人だけで住んで好き放題暮らそうという道もあったと思うんですけど。
夏帆:そうなんです。塔子はあんまり器用な人じゃないのかもしれないですね。
林:「お義母さんたちとは別居したい」と言えばよかったのにね。塔子さんのお母さん(余貴美子)が「あんた、ウソついて幸せなの?」って娘である塔子に言うじゃないですか。
夏帆:すごいセリフですよね。「人間、どれだけ惚れて死んでいけるかじゃないの?」って娘に言うって。
林:こういうお母さんに育てられた娘が、この家で我慢できるわけないと思いますよね。
夏帆:塔子はたぶん「お母さんのようにはなりたくない」と思って、安定を求めて結婚したと思うんですけど、ただ、どこか似てるというか。
林:旦那さんだって悪い人じゃないですよね。ハンサムでスマートだし。
夏帆:そうなんですよ。それに加えて優しいし、家族思いでいい人で。でも、たぶん塔子は「ここは自分の居場所じゃないな」という気持ちがずっとあったと思うんです。
>>【後編/仕事と家庭の両立は自信ナシ? 夏帆「結婚するとどうなんですかね」】へ続く
(構成/本誌・松岡かすみ、編集協力/一木俊雄)
※週刊朝日 2020年2月28日号より抜粋