夏帆:自分の意思がないように見えるけど、実はすごく強い女性なんですよね。それを抑え込んで生きてきたけど、鞍田さんと再会して、ちょっとずついろんなことが解放されていくんです。

林:鞍田さんと二人で、雪の中を車で走ってる途中に食堂に寄りますけど、あの食堂のご夫婦は、この二人、夫婦じゃないってたぶん見抜くんですよね。

夏帆:そうですね。目が見えない旦那さんを奥さんがケアしてるのを見て、塔子もこの先の鞍田さんとのことをあの夫婦に重ね合わせるというシーンですね。

林:あの食堂の夫婦もワケありという感じで、心に残るいいシーンでした。やっぱり女性の監督(三島有紀子)だからきめ細かいですよね。

夏帆:女性の監督だからというよりかは、三島監督だから、というのがあると思います。「三島監督じゃなかったらこういう映画にならなかったんじゃないか」と男性スタッフが言ってましたね。

林:監督さんは、なんで夏帆さんにしたとおっしゃってました?

夏帆:三島監督とは過去にもご一緒しているのですが、なんで私だったんだろう……。また私を撮りたいと思ってくださったのはすごくうれしかったのですが、なぜ私だったのかはまだわからないです。

林:たぶん三島さんは、今まで誰も見たことのない夏帆さんをみんなに見せたかったんじゃないですか。

夏帆:確かに「違う夏帆を」ということはずっと言われてました。「今のでオッケーだけど、もうちょっとできるよね」とか、「もうちょっと違うところに行けるよね」って、常に現場で言われてました。

林:ああ、そうなんだ。

夏帆:それだけ期待してくださってるというか、私を信じてそう言ってくださってるんだなと感じて、とにかく三島監督に応えたいという一心でした。

林:塔子さんが新潟に出張して、大雪で飛行機も新幹線もストップして帰れなくなったとき、夫が「タクシーで帰ってこい」って電話で言うじゃないですか。私も京都に遊びに行ったとき、「きょう泊まる」って夫に電話したら、「ふざけるな。這ってでも帰ってこい」って言われたから、「わかる、このムッとする感じ」って思いましたよ。奥さんが泊まるということ自体、男の人はすごく腹が立つみたい。

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