(4)検疫官のような防護服を着なければ危ないの?
クルーズ船に乗り込む検疫官は防護服を着ていた。乗務員からは「検疫官たちが完全防備の防護服なのに、客室にいる感染者を連れてくるのはマスク1枚だけの乗務員任せ」との声が漏れる。自治医科大学付属病院臨床感染症センター感染症科診療科長の森澤雄司医師が言う。
「あの様子をテレビで見たら、国民にすごく怖いウイルスではないか、との印象を与え、かえってよくありません。また慎重を期すのはわかりますが、きちんとした着脱の訓練をしていないと逆効果で、着け方が悪ければ、脱ぐ際にうつります」
(5)検査は希望者全員にするべきでは?
湖北省への渡航歴などとは関係なく検査できる体制を整備するべきではないか。
「医者が必要だと思ったら検査を受けられるようにしてほしい。しかし、不安になったからといって希望者全員に検査を受けさせるのは、医学的にまったく意味がない。肺炎になっている人の診断を確定させなければならないので、せきやのどの痛みぐらいでは検査の必要はない」(久住氏)
(6)やはりインフルエンザよりも怖い?
岡部氏が解説する。
「必要以上に不安に陥ることはない。感染=発病ではないし、多くの人にとって発病=重症ではない。09年の新型インフルエンザの時ほど早くは、世界中に広がっていない。もちろん完璧ではないが、インフルエンザ対策やノロウイルス対策は一定の効果があります。重症になるのはごく少数ですが、重症者らを早くピックアップして必要な治療と感染対策を行うことが重要です」
(7)中国の武漢の死者数が突出している理由は?
致死率は武漢が約4%、武漢のある湖北省以外の中国全体では、約0.17%と低い。久住氏がこう語る。
「患者が多すぎて、治療できる医療機関が不足しているからでしょう。重症の患者さんを武漢以外の高度医療機関に送って、集中的な治療ができれば致死率は下げられます。病院がパンク状態のため把握しきれない感染者数も、実際にはもっと多いと見ています」