キャンプシーズンとなったプロ野球。西武ライオンズの元エースで監督経験もある東尾修氏は、ソフトバンクに注目する。
【写真】レッドソックスの監督を解任されたアレックス・コーラ氏
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大リーグで昨年11月から大騒ぎとなったのがアストロズのサイン盗み事件だ。アストロズの2017年のワールドチャンピオンに関わった3チームの現役監督が解任された。
11月に米メディアが元アストロズ選手の告発を実名で報道。そこから大リーグ機構(MLB)が調査に動いた。今年に入って、MLBが調査結果を公表し、アストロズが17年から18年途中までサイン盗みを行っていたと断定。ジェフ・ルノーGM、A・J・ヒンチ監督に職務停止処分を科したが、球団はすぐに両者を解任した。それだけではない。レッドソックスは、アレックス・コーラ監督を解任。当時アストロズのベンチコーチを務め、サイン盗みの主導的な役割を果たしていた。さらに選手として関わっていたメッツのカルロス・ベルトラン新監督も解任された。
MLBの調査報告では、ビデオルームで捕手のサインの解析を行い、ごみ箱をたたくなどして音で打者に伝達したという。
サイン盗みは、投手と野手の真剣勝負の野球、そしてファンへの背信行為といえる。例えば、二塁走者が捕手のサインを自分の目で見て、打者にサインを送るのであれば、それはまだプレーヤー同士、グラウンド内の出来事だから、断罪はできないかもしれない。しかし、機器を用いた解析を行い、それを勝負に持ち込むことなど許されるはずはない。
外野席から望遠鏡でのぞいて打者に伝える……といったことは、古くから言われていた。バッテリーは乱数表を用いてサインを複雑にした時代もあった。ただ、特に打者は球種を伝えられて打っても、技術的進歩はない。むしろ退化することになる。
サイン盗みとはまったく違うのはクセ盗みである。投手の投球フォームや、けん制のクセ。捕手が打者のしぐさを探るといった行為はすべて現場の人間の「観察眼」である。ただ、何でもかんでも数値化される時代にあって、選手の感性や観察眼が失われるような事態になるのであれば、将来につながらない。ハイテク機器、テクノロジーが選手のスキルアップに用いられるのは歓迎だが、運用を間違えれば、今回のような不正につながってしまう。MLBでさらなる展開が出てくるのかはわからないが、日本は反面教師にしないといけない。