指導した北島康介選手、萩野公介選手が、計五つの五輪金メダルを獲得している平井伯昌・競泳日本代表ヘッドコーチ。連載「金メダルへのコーチング」で選手を好成績へ導く、練習の裏側を明かす。第6回は「若手」について。
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五輪に向けたオフシーズンのトレーニングの成果が見える年始めの重要な長水路(50メートルプール)の大会、北島康介杯が1月24~26日、東京辰巳国際水泳場で開かれました。
男子の選手を中心に「いよいよ五輪だ!」という好記録が相次ぎました。瀬戸大也は400メートル個人メドレーで日本記録に0秒04と迫る4分6秒09をマークして、五輪の金メダルに近づいていることを印象づけました。ロンドン五輪200メートル背泳ぎ銀メダルの入江陵介が復調をアピール、昨年の世界選手権200メートル自由形銀メダルの松元克央の充実ぶりも目を引きました。
男子200メートル平泳ぎでは18歳の佐藤翔馬が自己ベストを1秒63更新する2分7秒58で優勝しました。レベルが上がっているこの種目で、世界と戦える2分7秒台で泳ぐ10代の選手が出てきました。
慶応大学1年で、北島康介と同じ東京スイミングセンターで練習する佐藤は、前世界記録保持者の渡辺一平と競ったレースで積極的に飛び出し、水しぶきからもガッツを感じさせるいい泳ぎを見せました。
レース度胸と集中したときの力の絞り出し方、キックの強さが北島とよく似ていて、同じクラブから後継者が出てきたようで、わくわくしました。東京五輪を目指す若い選手の大きな刺激になったと思います。
日本水泳連盟は昨年9月、東京五輪代表選手の選考基準を発表しました。「全ての種目で決勝進出が可能な選手」という基本方針を立てて、個人種目の派遣標準記録は原則として昨年の世界選手権の決勝進出タイムとしました。選考対象の大会は今年4月の日本選手権のみ。決勝で派遣標準記録を突破した選手のうち上位2人を選考します。世界選手権金メダルで瀬戸の五輪代表が内定している男子200メートル、400メートル個人メドレーは瀬戸を除いた最上位1人を選びます。