「飼い始めた当初は、仕事中に気になっちゃうし、疲れて帰ったら帰ったで、ケージの中でうんちまみれのパコ美を洗わなきゃいけないし、育児ならぬ犬ノイローゼ状態。生き物を飼うのは大変なんだなって」
大久保佳代子さんがチワワとダックスフントのミックスであるチワックスのパコ美ちゃんを迎え入れたのは4年前のこと。テレビ番組のロケでペットショップに行き、そこで出会った。
「18歳で一人暮らしを始めてからずっと飼いたくて仕方がなかったけど、仕事が忙しくて。この機会を逃すとますます飼えなくなりそうで、いい子がいたら飼おうと決めてました」
40代も半ばを過ぎ、仕事は順調で安定感が出てきた。その半面、独身の大久保さんは自分のことしか考えなくてもいい今の状態に疑問を感じるようになった。
「本能的に自分ではないものにエネルギーを注ぎたいという時期だったのかも」
かつては仕事の後、友人と飲み歩いたり、夜中に呼び出されて飲みに行ったりするのが日常だったが、生活習慣が一変し、交友関係もかなり狭まったそう。
「犬が早起きするから、まず早寝。12時前にはベッドに入っているから、夜中に飲みの誘いがあっても気づかない。そのうち誘い自体も少なくなって。飲みに行くときも、家に帰って散歩とご飯を済ませてから出るようになりました。近所で仲のいい友達と飲んで、『パコ美見ていく?』ってうちに誘うコースが増えました」
何よりも、家でパコ美を相手に晩酌するときが一番幸せと感じるようになった。
「外で人に好かれようと気を使って頑張って飲んで、その結果気分悪くして、二日酔いになって、内臓を壊して時間を無駄にする意味って何だろう?って。ほろ酔いしたいなら、家でパコ美相手が一番いいなと」
もう一つ変わったことと言えば、保護犬や保護猫への関心の高まりだ。
「山路徹さんや青木さやかさんといった身近な人が保護猫の活動に携わっていることもあって、興味を持ち始めました。トークイベントに出たり、譲渡会の情報をツイッターでリツイートしたりと、自分にできることをやっています」
パコ美と暮らし始めて4年、気づいたことがある。
「もともと感情を出すタイプじゃなかったけど、パコ美と一緒にいて楽しかったり、パコ美に万が一のことがあったらと想像して悲しくなったりと、パコ美の存在が、私の感情を豊かにしてくれています」
(文/本誌・鮎川哲也、吉川明子)
※週刊朝日 2020年2月14日号