平井伯昌(ひらい・のりまさ)/競泳日本代表ヘッドコーチ、日本水泳連盟競泳委員長。1963年生まれ、東京都出身。早稲田大学社会科学部卒。86年に東京スイミングセンター入社。2013年から東洋大学水泳部監督。同大学法学部教授。『バケる人に育てる──勝負できる人材をつくる50の法則』(朝日新聞出版)など著書多数
平井伯昌(ひらい・のりまさ)/競泳日本代表ヘッドコーチ、日本水泳連盟競泳委員長。1963年生まれ、東京都出身。早稲田大学社会科学部卒。86年に東京スイミングセンター入社。2013年から東洋大学水泳部監督。同大学法学部教授。『バケる人に育てる──勝負できる人材をつくる50の法則』(朝日新聞出版)など著書多数
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今月の東京都新春大会で日本新に迫る泳ぎを見せた青木玲緒樹 (撮影/堀井正明)
今月の東京都新春大会で日本新に迫る泳ぎを見せた青木玲緒樹 (撮影/堀井正明)

 指導した北島康介選手、萩野公介選手が、計五つの五輪金メダルを獲得している平井伯昌・競泳日本代表ヘッドコーチの連載「金メダルへのコーチング」。第4回は「才能」について。

【写真】東京都新春大会で日本新に迫る泳ぎを見せた青木玲緒樹

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 25メートルプールで争う昨年10月の短水路日本選手権の女子50メートル平泳ぎで青木玲緒樹が自身初の日本新記録を樹立しました。予選で出した日本新を決勝で0秒09更新し、29秒97で優勝しました。

 2000年1月、男子200メートル平泳ぎで当時高校2年の北島康介が短水路日本新を出して以来、20年連続で担当する選手が日本記録を更新してくれました。

 才能は発掘するもの。今年25歳で五輪出場とメダルを狙えるところにきた青木の歩みを振り返ると、そんな思いを強くします。

 北島を教えていた東京スイミングセンターで青木の泳ぎを初めて見たのは小学3年か4年のとき。左足の動きがぎくしゃくしていて、足のすねで水を蹴るような感じで、ずいぶん変則的だなあと思いましたが、一蹴りでびっくりするくらい進むんです。蹴った後に足を広げて引きつけるので水の抵抗が大きい。グィーンと進み、ブワーッとブレーキがかかる。マイナス点は大きいけれど、推進力に将来性を感じました。

 小学生のときは食が細くて、私が声をかけてもあまりしゃべらない。シャイな性格の選手はゆっくり成長することが多いので、長期的な視野で育てる必要があると思っていました。中学1年の07年JOCジュニアオリンピック杯の11−12歳女子100メートル平泳ぎで優勝して、10月、北島や中村礼子(アテネ・北京両五輪女子200メートル背泳ぎ銅メダル)ら五輪を目指す選手を中心に行った米国の高地合宿に連れていきました。

 本人に刺激を与えることに加えて、家族や周囲の人に対して将来を見据えて指導していることを理解してもらいたかったからです。

 私が東洋大の水泳部監督に就任した13年、青木も東洋大に進学しました。自分自身にもっと自信を持つとか、目標をしっかり設定させるとか、心技体でいうと心の成長を促すような指導を心掛けてきました。

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