最後の半年間は、午後7時を過ぎてさあ帰ろうと思ったら新しい仕事を頼まれて、そのまま9時まで残業という日が度々続いたという。
このままではキツすぎると感じた大石さんは、引っ越しを機にそのライフバルを退職、しばらく別の仕事をしていた。そこでの「やり方はわかる人に電話で聞いて」というような、上司のぞんざいな対応に嫌気がさし、高齢社に登録して、再びライフバルの仕事に戻ったのだった。
「今回は契約で職務内容をしっかり取り決めているので、パートのときのようなことにはならない。定時の5時半できっちり退勤しています」と、大石さんは笑う。
前出の関さんも、ライフバルで正社員として働いていたころは、あの件はどうなっているか、あの人は大丈夫かと、職場のいろいろなことが気にかかっていたという。「でも今は、与えられた電話受付という役割をしっかり果たそうと思っています。責任の範囲が限定されて、働きやすいですね」
責任の範囲が明確になるからこそ、仕事以外の趣味や社会活動にも、しっかり向き合えるようになるのだろう。
シニアにとっての派遣という働き方の評価ポイントその3は、知り合いの伝手やハローワーク経由では、なかなか発見できない会社に出会えるという点だ。
リクルートスタッフィングの派遣社員、花島孝功さん(69)は、あらゆる実務に通じた“企業法務のプロ”で、現在はとあるベンチャーで法務関係の仕事をしている。
若いころは司法試験を目指していたが、34歳でその道はあきらめ、法律事務所や外資系金融会社、債権回収会社などを経て、51歳から60歳までは、大手医薬品卸会社の法務部門で働いた。
「会社法や個人情報保護法、独占禁止法、金融商品取引法など、企業に関するいろいろな法律の制定や改正が進められた時期で、それらに対応する実務を幅広く経験できた。ちょうどいい時代に法務部門にいました」と花島さん。
医薬品卸会社の定年後は業界団体の事務局長に就任。65歳まで働き、貸しビル運営会社の総務部長へ転じたが、3カ月で辞めた。社長の経営姿勢に共感できなかったのだ。