派遣社員という働き方を選ぶシニアが増えている。国の調査によれば、60代後半の派遣社員は、2012年から17年にかけて1.8倍に増えた。人生100年時代と言われ就労期間が長くなっていくなか、派遣社員という働き方の何がシニアに受けているのだろうか。
冒頭述べたとおり、国の就業構造基本調査によると、65歳から69歳の派遣労働者は、2012年に3万7100人だったものが17年には6万8600人になった。実に1.8倍に増えている。
60歳以上のシニアの派遣事業を手がける会社の盛況も、こうしたデータを裏付ける。シニアのプロフェッショナル人材の派遣を展開するリクルートスタッフィングでは、企業とマッチングできた60代以上のシニアの人数が、18年から19年にかけて前年同期比で1.8倍に増加。シニア対象の求人案件は倍増となっている。
「働きたいシニアが増える一方で、企業は人手不足となっている。求めるスキルや経験を満たしていれば、企業側も年齢を気にしない傾向が強まってきています」と、事業を手がける同社エンゲージメント推進部部長の大塚綾乃氏は話す。
シニアの派遣を専ら手がける高齢社では、5年前には250~300人くらいだった派遣社員が、現在は約430人に増えた。
創業者が東京ガス出身ということもあり、ガス器具フェアやマンション内覧会への派遣など、東京ガス関連の案件が3分の2を占める。だがそれ以外の仕事も、駐車違反対策のための家電修理の車への同乗、早朝を中心としたレンタカー会社の受付といった案件が増えてきているという。
ここからは派遣社員という働き方のどういう面がシニアに受けているのか、実際に働く人のエピソードを交えつつ紹介していこう。
働くシニアにとっての派遣社員の評価ポイントその1は、自分に合った、柔軟な働き方ができることだ。
高齢社の派遣社員、関美保さん(66)は、19年4月からガスを使った給湯、発電システムの修理や点検をする会社で、週3日働いている。担当は電話受付で、顧客からの修理や点検依頼に対応している。
関さんの前職は東京ガス系の地域会社で、ガスの開閉栓、ガス機器の販売修理などを担う東京ガスライフバルだった。40代から60歳までは正社員、そこから65歳までは契約社員としてフルタイムで働いた。ショールームでの店頭接客や総務部門などを経験した。
ライフバルでは65歳までしか働けなかったため、18年、高齢社に登録し、現在の仕事を紹介された。