「こんな状態で自分のキャリアを終えたくない」と思った花島さんは、ハローワークなどを活用して自力で就職活動を進める一方、リクルートスタッフィングにも派遣登録した。まだまだ自分の力を生かせる会社はあると思ったからだ。
いったん、ハローワークで見つけた貸会議室運営会社の法務部門に、契約社員として入った花島さん。だがここでも、社長の経営姿勢に今ひとつ賛同できなかった。
そうこうするうちにリクルートスタッフィングから、食用油を扱う大手食品メーカーを紹介された。こうして花島さんは18年4月から、同社の法務部門で働き始めた。
同社で働いた印象について花島さんは、「面接では皆さん表情がよく、安心感を与えてくれた」と振り返る。働き始めて、社員が会社を信頼し、自分の仕事にやりがいを感じていることを実感できた。「それが面接でのいい表情に表れていたのだとわかりました」
司法試験に合格して退職すると思われていた前任者が復職したため、花島さんは7カ月で契約満了となった。
自力での就職活動では書類選考の段階で不合格となることも多く、花島さんは年齢の壁を感じていたという。
だが派遣会社が介在することで、営業担当者は派遣先候補企業の人事に、履歴書には書ききれない経験の幅広さや、人となりを伝えることができる。
こうした働きが、自力での就職活動ではなかなか巡り合いにくい会社と、シニアがマッチングされることにつながるのだろう。
リクルートスタッフィングでは、それまでの経歴からは意外とも思えるようなマッチングも実現している。金融機関で融資や営業、人事などを経験したシニアが、大学のキャリアカウンセラーに派遣されている例がある。
営業や融資で培われた傾聴力が、学生の就職相談にも生かせると判断されたのだという。
自分では気づきにくいような、思わぬ派遣先とのマッチングを実現するために大切なのは、「これはずっとやってきた、誰にも負けないといった、自分なりの強みをしっかり言語化しておくことです」と、前出のリクルートスタッフィングの大塚氏は話す。
そこを明確に派遣会社側に伝えられれば、派遣会社に寄せられている多数の案件から、意外なマッチングが見いだされる可能性が高まるということだろう。(ライター・五嶋正風)
※週刊朝日2020年1月24日号より抜粋