東京五輪での金メダルがテーマとなる2020年の野球界。東尾修氏は、選手だけでなく関係者全てに覚悟が問われると言及する。
* * *
2020年。新年明けましておめでとうございます。年末年始は野球界の動きは少なかったですが、サッカーやラグビー、そして箱根駅伝とスポーツ界はまた、熱気に満ちたスタートを切りました。野球界は東京五輪での金メダルが大きなテーマになります。
08年の北京五輪以来となる野球競技。24年のパリ、それ以降の五輪に野球競技が継続されるかどうかというグローバルな観点でいえば、将来に悲観的な見方をしても仕方がない。まずは日本で行われる五輪で、国民の方々を巻き込んで応援していただける体制を整えられるかどうか。そのためには、ラグビー日本代表がワールドカップで示したように、チームとしての素晴らしさ、試合としての面白さを伝えなければいけない。プロ野球界OBとしても、そのための努力を惜しむわけにはいかない。
五輪における野球は、開催時期がシーズン中の7、8月とあって、3月開催の「WBC」、11月開催の「プレミア12」とは選手の状態も異なる。まず、3月なら開幕直前。前年の成績をもとに選手選考を行うしかないし、大会までに選手の状態が高まることを、ある意味「信じる」しかない。11月の「プレミア12」はシーズン終了後で、その年の成績を見ながら選出できるのだが、一方でシーズンを戦い抜いた疲労度も加味したメンバー構成となる。シーズンの激闘から目に見えない疲労や故障があって、辞退者が多く出るのもそのためだ。
だが、五輪はシーズン中。しかも12球団は五輪期間中の公式戦の休止を決定している。つまり、フルメンバーで戦える土壌が整っているということだ。直前まで試合をやっており、夏場に向けて調子を上げている選手の見極めも可能だ。コンディション優先の選考が可能となる。あとは、侍ジャパンの稲葉篤紀監督がどこまでチームの結束力を大切にするか。つまりこれまで招集してきた選手とコンディション面をどこまでてんびんにかけて人選するかがカギとなる。