ジャーナリストの田原総一朗氏は、安倍シンパの論客が反対の姿勢を示す習近平国家主席訪日の「国賓待遇」問題について持論を展開する。
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2020年春に予定されている、中国・習近平国家主席の「国賓としての訪日」が熱い話題になっている。
というよりも、反対論が続出しているのである。
米国に詳しいジャーナリストの古森義久氏は産経新聞で、「安倍首相は、日中関係は完全に正常な軌道に戻ったというが、尖閣諸島領海に武装艦艇を恒常的に侵入させる中国との関係が、なぜ正常といえるのか」と厳しく批判している。
尖閣問題だけではなく、香港市民に対する弾圧的姿勢、さらに新疆ウイグル自治区でも人権を無視した弾圧、そして北海道大学教授が不当拘束された事件など、習近平国家主席の中国では尋常ならぬ事柄が多発している。
このような国との関係が「正常な軌道に戻った」という表現自体が大いに問題だというわけだ。
櫻井よしこ氏も「国賓待遇での来日を理解しがたい」と批判し、「日本の尊厳と国益を護る会」代表幹事の青山繁晴参院議員も、反対の姿勢を表明している。
実は、こうした人物は、いずれも安倍シンパの代表的論客なのである。
野党やリベラル系のマスメディアが、安倍首相が主催した「桜を見る会」をめぐる問題を厳しく批判していたときに、それをナンセンスだと、冷ややかに笑い捨てていた。
私は、「桜を見る会」の問題は、安倍内閣の神経が緩みすぎたのだと捉えていて、自民党の幹部たちにそのことを言うと、「そのとおりであって、恥ずかしいかぎりだ」と、誰もが答えた。
そんな誰もが問題だと見ている「桜を見る会」を看過していた安倍シンパでさえも、今回の習近平国家主席の「国賓としての訪日」は許しがたいというのである。
私自身、現在の習近平国家主席の中国のあり方は、いろいろ問題ありだと考えている。
たとえば、香港に対して、北京政府は「一国二制度」と言いながら、やっていることは強圧的で、だからこそ今回の香港区議会選挙でも、過激だと思えるデモに賛成する候補者たちが数多く当選したのである。