インタビューに笑顔で応じる萩野公介 (撮影/写真部・掛祥葉子)
インタビューに笑顔で応じる萩野公介 (撮影/写真部・掛祥葉子)
この記事の写真をすべて見る
2020年の顔 1/2 (週刊朝日2020年1月3-10日合併号より)
2020年の顔 1/2 (週刊朝日2020年1月3-10日合併号より)
2020年の顔 2/2 (週刊朝日2020年1月3-10日合併号より)
2020年の顔 2/2 (週刊朝日2020年1月3-10日合併号より)

 2020年東京五輪の競泳男子400メートル個人メドレーで連覇の期待がかかるプロスイマー・萩野公介(25・ブリヂストン)は19年、初めて大きな挫折を味わった。

【編集部注目の「2020年の顔」をもっと見る】

 不振に陥って3~7月は大会から遠ざかった。4月の日本選手権欠場を発表したとき、「理想と現実の結果の差が少しずつ開いていき、モチベーションを保つことがきつくなってきた」とコメントした。

 5月中に練習を再開して8月のワールドカップで大会復帰。その後、積極的にレースに出て、記録が戻りつつある。暮れの取材では、吹っ切れたような明るい表情でこう話した。

「いい練習ができている。やるべきことや見直す点が多くて、『これから』という気持ち。前に進むことが楽しみ。進むべき道の先が東京オリンピックなので」

 栃木・作新学院高3年で出た12年ロンドン五輪で銅メダル、東洋大4年の16年リオデジャネイロ五輪で金メダルに輝いた。「東京五輪の主役」という期待がかかる中で、水泳人生の危機を迎えた。今、こう振り返る。

「純粋に水と向き合えなくて、シンプルに考えられなくなっていたんだと思います。いろんなことを考えて、自分の中でもやもやして、能力的にできなくなって、ひとことで言うと、つらい状況になっていました」

 プールから遠ざかり、初めて丸刈りにした。ドイツやギリシャを旅した。信頼する多くの人に会った。小学3年から高校時代まで通った、みゆきがはらスイミングスクール(宇都宮市)の粂川進代表に言われた。

「いつ引退してもいい。自分の水泳人生なんだから、引き際は自分で決めろ」

 その言葉が「すっと心に落ちた」という。

「水から離れても、泳ぎたいという気持ちは変わらなかった。引き際はここじゃない」

 20年4月、五輪出場権をかけて日本選手権に挑む。平井伯昌コーチからは「死にものぐるい以上の練習が必要」と言われている。

「一回落ちたからこそ、上がっていくことが経験できている。19年は一瞬で過ぎた感じ。20年は長い一年にしたい」

 復活の年が幕を開ける。(本誌・堀井正明)

週刊朝日  2020年1月3‐10日合併号