――山口さんは会見で、伊藤さんがうそをついていると言っています。

 うそつきだと言われたことがありますが、すでに反論しています。『Black Box』には、山口さん側に反論する内容が書いてあります。「記憶が全くない」と述べたとカルテに記載されていることについては、私はすし屋のトイレに行った時点で記憶を失いました。その後、私が起きた瞬間にひどいことをされているのがわかり、「痛い、痛い」と叫びました。すし屋のトイレから起きるまでは記憶はないですが、起きた時点からの記憶は鮮明です。病院を受診したとき、私はおそらく、「一部、記憶が無い」と言いました。それを聞いた先生や看護師は調査の専門家ではないので、「彼女は記憶が無い」ということをカルテに記載したんだと思います。裁判官は私が話した内容には変遷がないと判断しています。私の説明には一貫性があります。

(伊藤詩織さんの代理人の村田智子弁護士)
 おそらく山口さん側が言っていることというのは、詩織さんが被害直後に行った産婦人科のカルテに、性交渉が行われた時間が午前2~3時の間だという記載があったから彼女はうそをついている、ということではないかと思う。
 彼女がすぐ行った産婦人科のカルテについては、記載内容の正確性に疑義があるということが判決に書かれています。カルテの記載と彼女の記憶が矛盾するからといって、彼女がうそをついていることにはなりません。

(伊藤さん)
 私は避妊のためのピルを飲んだ後に出血したので、別のクリニックを受診しました。その時はピルを飲んでから1週間前後だったと思うんですが、ピルの副作用で出血があったと話しをしています。その後に妊娠の心配を山口さんに伝えていたのかというと、それから月経が来なかったということに加え、当時の捜査員から山口さんに連絡してどこにいるのか探ってほしいと言われていた。「申し訳ないが詩織さんからコンタクトをとってくれ」と、捜査員から言われたんです。すごくいやでしたが、妊娠の心配について連絡しますと捜査員と相談した上で、伝えたのです。

 私のおじが検事ではないと指摘されたことについても、正確には「副検事」なんです。家族内ではおじを「検事」と呼んでいました。

――山口さんが政治的な影響力を行使したのではないか、ということについてはどうですか。

 逮捕状が取り消されたことについて、非常に珍しいことだといろいろ調べてわかりました。なぜそうなったかということを、当時警視庁の刑事部長だった中村格さんに質問しましたが、回答はないです。中村さんの自宅まで聞きに行ったんですが、逃げられました。人生で警察官を追っかけることは想像もしていませんでした。

 政治的圧力があったというはっきりした証拠はありませんが、ほかに理由は考えられません。私に起きたことであれば、ほかのどんな人にも同じことが起きうる。政治と警察が関わっている可能性について、私たちはもっと調査するべきです。異例の手続きが行われた理由について、問いただすしかないのです。

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「#WeToo」を始めた思いとは