西武ライオンズの元エースで監督経験もある東尾修氏は、これからの時代の名球会はどうあるべきかを語る。
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日本プロ野球名球会も新たな時代に対応すべく動き出した。私も参加した総会が10日(日本時間11日)、米ハワイ州ホノルル市内で行われ、名球会規約に追加されることになったのが特例枠についてだった。
日米通算で打者が2千安打以上、投手が200勝以上もしくは250セーブ以上に限定されていた会員資格。そこに「特例枠」を設けることになった。理事会でまず候補者を挙げ、総会に諮られ、全会員の4分の3以上の賛成をもって特例を適用するというものだ。
古田敦也副理事長も「大谷(翔平)君が1千安打100勝した場合に名球会としては価値がないのか? 自分の2千安打よりはすごい」と話していたけど、そういった投手、野手にとらわれない枠組みの選手も出てきている。投手だけ見ても、分業制が進み、200勝や250セーブだけでは網羅できない価値ある選手がいるのは課題だった。
王貞治顧問も「時代に合った形に変化していくということ。良いほうに変わらないと」と話したけど、そのとおり。令和の時代に入り、「昭和名球会」としてスタートした組織も平成、令和の野球の変化をしっかりと見据える必要があった。
変革が「遅い」という意見もあるだろう。ただ、名球会というのは、プロ野球界でトップの成績を残した選手の集まり。簡単に会員資格をクリアしてもらっては困る。そして、現役選手の目標であるべきで、明確でわかりやすい「数字」のクリアをもって、入会としていた。だから、正直「投票制」という形をとることに多少の違和感を覚える会員もいるのは確かだ。同じく野球記者の投票制となっている野球殿堂との差別化を図ることも難しくなる。
ただ、これからも名球会が選手の「目標」の一つになるためには、そうは言っていられない。200勝以上の投手は2000年以降、工藤公康、野茂英雄、山本昌、黒田博樹の4人しか入会していない。打者が毎年のように2千安打を達成しているのに対して、入会のハードルは上がっていた。どんどん次世代の選手が入ってこなければ、名球会として野球界に果たす役割も担えなくなってしまう。これからは古田、野村謙二郎、佐々木主浩といった50歳代が中心となって活発な活動を行ってもらいたい。