配偶者や子どもなどを受取人とした生命保険の場合、死亡保険金は受取人固有の財産とみなされ、「500万円×相続人の数」を超えた部分が課税対象となる。
不動産の“時価”を見る際は、毎年4~6月ごろに市区町村から送付される「固定資産税の課税明細書」が参考になる。明細書を紛失した場合は、市区町村役場などで「固定資産税評価証明書」を入手するといい。ただし、一般的には土地の相続税評価額は固定資産税評価額より高く、「固定資産税評価額に1.14を乗じた価額が一つの目安になる」(税理士法人トゥモローズの代表税理士、大塚英司さん)。
なお、故人が相続開始の直前まで住んでいた自宅については、配偶者や同居する親族などが相続する場合、330平方メートルまでの土地の相続税評価額を8割減額する「小規模宅地等の特例(特定居住用宅地等)」を適用できる。
このほか、子どもや孫の名義の預貯金や、専業主婦の妻のへそくり口座などがあると「名義預金」とみなされ、相続財産に加算されることもあるので注意したい。
これらの資産の合計から、債務や葬式費用など負の資産を減じた額が、課税相続財産ということになる。
チャート3の相続税は、「3千万円+(600万円×法定相続人の数)」で算出される基礎控除を超えた分だけが課税対象となる。チャート2で計算した課税相続財産が基礎控除の範囲内に収まっていれば、相続税はかからない。また、配偶者には独自の税額軽減制度があり、相続財産1億6千万円までは課税されない。
相続財産が基礎控除より多くても、「控除の適用で申告しなくてもいい可能性がある」と指摘するのは前出の大塚さんだ。相続が10年以内に続けて起きた場合(相次相続)や、相続人に未成年者や障害者がいる場合は所定の控除が受けられる。
国税庁のデータを見ると、2017年に亡くなった約134万人のうち、相続税の課税対象となったのは約11万2千人に過ぎず、課税割合は8.3%にとどまっている。実際に相続税が課されているのは10人に1人に満たないのだ。(ライター・森田聡子)
※週刊朝日 2019年12月20日号より抜粋