TOKYO FMのラジオマン・延江浩さんが音楽とともに社会を語る、本誌連載「RADIO PA PA」。今回はローリング・ストーンズの思い出について。
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この夏、ロンドン、バルセロナ、ビルバオを旅したが、ヨーロッパでは老若男女、多くの人がザ・ローリング・ストーンズの「舌と唇」のデザイン、通称ベロTシャツを着ていた。
1970年にミック・ジャガーが、まだ美術学校生だったジョン・パッシュにオーダーしたクリエイティブは、ロックの反骨精神を象徴するアイコンとして半世紀にわたって支持されている。ストーンズは今年、北米ツアーを敢行したが、黒のリムジンで初日会場のソルジャー・フィールドに乗り付ける姿がネットで拡散され、時代と世代をまたぐ世界市民的ロックバンドとしての存在感を再認識させた。
ミックの唇からインスパイアされたとも言われるベロTだが、ミックの盟友といえばキース・リチャーズ。小学校のクラスメイトだった彼らは10代後半で再会するとチャック・ベリー談義で盛り上がり、19歳でデビュー。“ジャガー=リチャーズ”のコンビで、バンドの中核をなすようになった。アルバム「メイン・ストリートのならず者」という最高傑作を世に送り出し、70年代にリリースしたアルバムすべてがビルボード首位、「ローリング・ストーン」誌の表紙を飾るなど、史上最高のモンスターバンドになった。
心臓弁の手術をしたミックに気を遣(つか)って、ツアー中はキースがタバコの煙を自動吸引する灰皿を使っているという話に、事業部時代、彼にインタビューしたことを思い出した。
1995年、『ヴードゥー・ラウンジ・イン・ジャパン』での来日時、マイクと録音機をセットしたホテルオークラの一室に、革ジャンに細身の黒いジーンズのキースが現れ、ブーツの脚を組んで僕の肩に手を置いた。
シルバーのアクセサリーが触れあう音はガラガラヘビを想像させた。