年齢階級別の認知症有病率 (週刊朝日2019年11月22日号より)
年齢階級別の認知症有病率 (週刊朝日2019年11月22日号より)
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75歳以上に多い病気 (イラスト/和田慧子 週刊朝日2019年11月22日号より)
75歳以上に多い病気 (イラスト/和田慧子 週刊朝日2019年11月22日号より)

 これまで心身ともに健康だったとしても、「後期高齢者」にあたる75歳以上を境にして、さまざまな不調が出やすくなる。特に注意すべき身体の変化をその対策とともに詳しくみていこう。

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■フレイル
 介護が必要になる人も、75歳以上で急増する。

 高齢社会白書によると、75歳以上の要支援・要介護認定者数は、65~74歳の約7倍。75歳以上の要介護認定率(被保険者に占める割合)は23.3%にものぼる。多くの場合、坂道を徐々にくだるように要介護状態に入っていく。その状態を示すものとして昨今、注目されているのが、フレイルという病態だ。

 フレイルとは日本老年医学会が「加齢に伴う予備能力低下のため、ストレスに対する回復力が低下した状態」を表す“frailty”の日本語訳として提唱、要介護まではいかないけれど、心身の機能が落ちて弱々しくなっている様子を示している。次の5項目のうち、3項目以上当てはまるとフレイル、1~2項目だとフレイル予備軍(プレフレイル)となる。

(1)意図せず半年間で2~3キロ以上体重が減った
(2)疲れやすい
(3)身体活動量が低下した(軽い運動、体操、スポーツはしていない)
(4)握力が低下した(利き手で男性26キログラム未満、女性18キログラム未満)
(5)歩く速度が遅い(1メートル/秒未満)

 ヴィデビムス虎ノ門クリニック(東京都港区)院長で、老年医学を専門とする児島剛太郎さんは、「フレイルの患者数は高齢になるほど増えていきますが、75歳を境にその増え方が急になります」と話す。

 児島さんはロンドン大学在籍中、日本人高齢者のフレイルに関する研究論文を集めて、年齢とフレイルの関係を調べた。それによると、フレイルの有病率は65~69歳では1.9%、70~74歳では3.8%。それが、75~79歳になると10.0%となり、80~84歳では20.4%。倍々に増えていたのだ。

「フレイルになぜなるのか、詳しいことはわかっていませんが、加齢や慢性疾患によって筋肉量が低下すると、基礎代謝や体力が落ちます。消費エネルギーも減るので食欲がなくなり、低栄養状態を招く。それにより筋肉量がさらに減ります。こうした負のスパイラルによって全身の機能が低下して、寝たきりや要介護状態に陥ってしまうと考えられています」(児島さん)

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