でも、このように周りの人に甘えるのも、限りがあると思うのです。いつかは自分で晩酌の準備をしなければいけない。そのときに、刺し身は買ってくればいいが、湯豆腐は自分で作らなければいけません。

 それに気づいてから、湯豆腐作りに挑戦しようと思い立ちました。どうせ挑戦するなら、飛び切り旨い湯豆腐を作ってやろうと思っています。それで生き甲斐の晩酌に花を添えるつもりです。

 職員食堂とは別に、これは旨いと思ったのは、新大阪駅構内の料理店にあった湯豆腐でした。たった400円なのですが、これがいい。それから、大阪への出張が楽しみになったのですが、残念ながらその店はなくなりました。私にとって幻の湯豆腐です。

 一口に湯豆腐といっても様々です。旨い不味(まず)いの差はどこから来るのか? 豆腐を昆布だしの湯で煮たものですから、旨い豆腐と旨い昆布だしで、旨いものができるはずです。

 ところが豆腐の種類というのはごまんとある。この中から自分の口に合った豆腐を選び出さなければなりません。そう考えたら、がぜん、やる気が出てきました。

 さらに昆布だしです。知り合いの料理店で聞いてみたら、利尻昆布70グラムを2リットルの水で沸騰しないように数時間煮出すそうです。これは奥が深そうで楽しみです。

 人によってはつまらないことでしょうが、私にとっては大きな挑戦です。心がときめきます。

週刊朝日  2019年11月8日号

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