まばたきが多い、光がまぶしくて目を開けていられない、モノが二重に見える、片方の目が急に見えなくなった……。こうした症状は“脳”が原因で起こることが少なくない。なかには一刻も早く診てもらったほうがいいものも。これらの症状の原因と対策を紹介する。
まず、見え方の異常は、危険な脳の病気のサインとして表れることがある。
日本では数少ない神経眼科医の一人、清澤眼科医院(東京都江東区)院長の清澤源弘さんは、「特に、片目だけ急に見えなくなる、モノが二重に見えるといった症状は要注意」という。ちなみに、神経眼科とは、眼球だけでなく脳にも焦点をあて、診断や治療を行う眼科の一領域だ。
「片目だけ急に目が見えなくなる状態を『一過性黒内障』と呼びます。多くは数秒から数分で回復しますが、脳梗塞(こうそく)の前兆である可能性が高い。すぐにMRIなどの画像検査をして脳に問題がないか確かめることが大切です」(清澤さん)
脳梗塞とは、脳の血管がつまる病気。酸素や栄養が届かなくなるため、脳の組織が部分的に壊死(えし)してしまう。代表的な症状は体の片側のマヒや頭痛、めまい、おう吐などだが、見え方にも問題が起こることもあるという。
視力が一時的に失われる“犯人”は、動脈硬化によってできた血栓。これが目につながる脳の細い血管をつまらせると、血管から栄養や酸素を供給する神経回路が一時的にダメージを受ける。それが、見え方の異常をもたらすのだ。
モノが二重に見えるのも、脳梗塞の前兆の一つ。専門的には「複視」という。
「眼球を動かす神経は三つあり、それらがマヒすることで複視が起こります。目は車のハンドルみたいに右を見たいときには右を向き、左を見たいときは左を向きます。ところが、片方の神経がマヒすると、その目は見たいほうを向けなくなるので、左右の目の視線が合わなくなる。それで複視が起こるのです」(同)
黒内障や複視は、高血圧や糖尿病がある高齢者に起こりやすい。目に表れた「脳の病気」のサインとして見逃さないこと、気がついたらすぐに眼科、できれば神経眼科への受診が大切だ。