北村:それが舞台なんですよ。映像ですごい人気者になったから「舞台で主役でお願いします」みたいなことを言われても、「ちょっとカンベンして」って話よね。時間をかけて、ノーギャラででもやるという意欲を持って舞台に入ってくる若い子がいたら素晴らしいんだけど、そうじゃない。映像で人気者になって、「僕も舞台をやりたい」って事務所に言って、マネジャーが売り込みに来るところたくさんありますけど、私は主役じゃ使いたくないから、「一から始めるんだから、このへんの役でもいいですか?」って言うんです。「いや、それはちょっと」と言って出ない人が多いですよ。舞台をやったこともないし、実力もないのに、なんで主役にしなきゃならないんですか。
林:確かにそれはそうですよね。
北村:今、芝居がやりたいというより、有名になりたいがために芝居をやるというか、プロデューサーとかディレクターが役者を探しに小劇場に見に来るんですよ。見に来られたら引っ張ってもらえるというんで、小劇場に人が多いんです。
林:なるほど。パーティーなんかで若い女優さんが、「いつも舞台を拝見してます。私、舞台に出るのが夢なんです」とか言ってくるでしょう。
北村:マネジャーが連れてきてね。それがマネジャーの仕事ですから。
林:そういうきれいなカワイイ子は、見飽きちゃってるんですか。
北村:そんなことないですよ。来年の春にチェーホフの最後の作品「桜の園」をやるんですけど、杉咲花ちゃんに初舞台で出てもらうんです。もちろん主役じゃないですよ。事務所の人が「杉咲を舞台デビューさせたいので、何かありましたら」って来たんです。彼女うまいから、このへんだったらできると思って「この役どうですか」って言ったら、「ぜんぜん大丈夫です」って。それを言えるマネジャーは偉いんですよ。
林:なるほどねえ。それにしても、シス・カンパニーのお芝居は、すごい人ばっかりをよく集めてくるなと思います。
北村:でも、役者ってうまい下手じゃなくて、好き嫌い。それだけです。好きな人の芝居はうまいと思うし、いい役者だと思うんです。