この“つま先上げ”をプラスした5ステップの「かかと落とし」が完全版「鎌田式かかと落とし」である。

「10年ほど前に、独自に考案したのですよ。このほうが骨も筋肉も鍛えられて、効率がいいですからね。こちらも、10回を1セットとして1日に3セット行うくらいで十分です」

「鎌田式かかと落とし」は、骨を強化して骨粗鬆症を予防するだけでなく、転倒、骨折も予防する。そしてさらに、高血糖予防や認知症予防にもつながるという。

「かかと落としによって分泌される骨ホルモン・オステオカルシンには、膵臓に働きかけて血糖値を下げる働きもあります。またオステオカルシンは、実はコレステロール値やメタボを改善し、動脈硬化を防いでくれるアディポネクチンという物質の分泌も促してくれるのです」

 鎌田式では第二の心臓・ふくらはぎも刺激する。ふくらはぎを刺激することは、全身の毛細血管を刺激し、血流を促すことになる。これは脳梗塞の予防になり、認知症の予防にもなる。

 まさに万病を予防する「鎌田式かかと落とし」だが、鎌田さんにさらなるスペシャル健康術について聞いてみた。

「僕は骨、筋肉を鍛えるために毎日、『スクワット』と『かかと落とし』を行うことを日課にしていますが、『速遅歩き』も骨と筋肉のために必ずするよう、心がけています」

「速遅歩き」ではまずは3分間、歩幅を広くして速歩きをする。そのあと3分間、ゆっくりと遅歩きをする。

 この繰り返しで毎朝12分歩くことを、鎌田さんは日課にしているという。

「スピードに抑揚をつけて歩くと、短時間でも効果的に有酸素運動ができ、心肺機能も強化されます。毎日たくさん歩かなきゃと思うとなかなか続かないものですが、“速歩き・遅歩き・速歩き・遅歩き”で最低12分歩けばいい、となれば結構気がラクでしょう? 駅まで歩くときに、あるいはスーパーまで買い物に行くときに、ちょっと意識して、この『速遅歩き』を実践してみてほしいですね」

 鎌田さんは、中高年は三つのフレイル(虚弱)を予防するべきだと考えている。

「まず骨や筋肉などの『全身のフレイル』に気をつけること。そして口のまわりの筋肉が衰える『口腔フレイル』、外出が面倒になって、社会とのつながりが減る『社会的フレイル』に気をつけることが大切です」

 そのためには、家に閉じこもったりしないで、ひととコミュニケーションをとり、自分の足で、自分が行きたいと思った場所に常に歩いていけることが大事。

「生きている限り、いつも未来を見ていたいじゃないですか。そのための筋活。そのための骨活です。毎日無理なく続けられることを続けて、人生を楽しみながら生きていけたら、それが一番なんじゃないかな」

週刊朝日  2019年11月1日号

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