ただ、右派でも「議論を積極的にするべきだ」という意見もある。民族派団体「一水会」の木村三浩代表は、「先を見こして考えておくことは愛国者の条件。議論を妨げれば、国民の無関心を呼んでしまう」と語気を強める。

 木村氏の立場は、皇室のこれまでの伝統を尊重し、男系維持を限りなく追求する立場だ。旧皇族の皇籍復帰などを対策として考える。しかし、万策を講じた上で女性天皇が誕生することは仕方がないとした上で、皇室典範の改正をしておくべきだという。

「現行の制度では、皇室に嫁ぐ人に絶対に男子を産まないといけないという重い負担がかかる。皇室典範を『皇位は、皇統に属する男系の男子による継承を第一義とする。難しい場合は男系の長子とする』などと弾力的な制度にしておくべきだ」

 著書に『<女帝>の日本史』がある原武史・放送大教授は「明治以降の皇室典範の価値観に固執するべきではない」と主張する。歴史をひもとけば、推古天皇といった女性天皇だけではなく、皇后や将軍の正室など女性が権力をもってきた。

「女性権力者、いわゆる女帝は古来、連綿として日本に存在していた。しかし、徐々に男系を重視する考え方が確立していった。平安時代には血に対するケガレから女性天皇が忌避されるようになり、明治以降は皇后などの女性の権力を良妻賢母的なものに矮小化(わいしょうか)してしまった。男系イデオロギーで覆われた価値観を歴史的に相対化して、この天皇制度をどうするのか根本的に考える必要があります」

 国を思う気持ちは様々だ。異なる主張も理解しながら、冷静に議論を深めてもらいたい。

■女系天皇は南北朝の動乱招く/自民党・下村博文

「女系天皇は“南北朝の動乱”を招く恐れがある」

 こう指摘するのは自民党の下村博文衆議院議員だ。南北朝の動乱とは、14世紀に天皇家が京都の北朝と奈良の南朝に分かれ、正統性を主張した争いだ。50年以上も分裂が続いた。

「女系天皇が生まれれば、必ずどこかから『男系男子こそが正統だ』という人たちが出てきてしまう。そうなれば、国民が割れてしまう。天皇制の安定、ひいては社会の安定を大きく損なう可能性があります」

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