そんな中、今回の内閣改造で脱原発イメージのある小泉氏が本丸の環境相に就いたことに期待が高まった。小泉氏は、官邸に対して一定の発言力があるのではないかと思ったからだ。
しかし、フタを開けてみれば、小泉氏が安倍総理にサミット出席を働きかけた形跡は見えない。そのうえ、小泉氏が出席した会議では、セクシー発言と受け狙いのパフォーマンスだけ。まじめな政策論は素人同然で、世界中の環境専門家に「強烈」なマイナスイメージを植え付けてしまった。「やはり、日本はまじめに取り組むつもりはない」と。
日本は今、壮大な悪循環に陥っている。
政府が既得権企業の意向を忖度して温暖化対策に取り組まず、マスコミも安倍総理忖度で世界に批判されていることを国民に伝えない。国民は情報を与えられないから、日本が遅れているのを知らず関心も持てない。国民の関心が高まらなければ、選挙の争点にもならず、政治家は、票にならないことに熱意を注ぐことはない。新聞テレビも国民の関心がないことを報じても売れないし視聴率も上がらないから、ますます報じない状況が続く……。
日本は、気候変動対策で既に先進国の最後尾に位置するが、この悪循環が続けば、途上国にも追い越され、やがて世界の落伍者になる日が来る。国民は、いつそれに気付くのだろうか。
※週刊朝日 2019年10月11日号