しかし、これらの課題をクリアするための人材選びに大きな懸念がある。

 それは、経産省と安倍政権の動きだ。最近の経産省の個別企業対策は大失敗続きだが、その最大の原因は、上から目線の「俺がやってやる」モードだ。経産省の官僚には『官僚たちの夏』に象徴される「外資と闘う日の丸主義」「日本株式会社の社長は経産省」という時代錯誤の意識が根強く残る。さらに、最近は、受け狙いの「チャラチャラ感」がこれに上乗せされた。

 これらの悪しき特性が発揮されると、話題性のある人物を連れてこようとか、社内抜擢で「イケメンの若手」を社長にし、実権は豊田氏はじめ経団連系の社外取締役などが握って、それを経産省が裏でコントロールしようなどというバカなことになる可能性がある。

 さらに、日産本社が地元にある菅義偉官房長官も、これに関与できれば、「総理候補」としての存在感もアピールでき、選挙で日産の協力も期待できるから、介入の動機は十分にある。

 考えすぎだと思うかもしれないが、そうした懸念は日産社内からも聞こえる。

 今回の人事が官僚や政治家の介入でおかしなことになれば、必ずや、それが日産再建失敗の原因だと言われる日が来る。

 そう警鐘を鳴らしておきたい。

週刊朝日  2019年9月27日号

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