病院の医師・歯科医師の全体数に占める無給医の割合を本誌が取材したところ単純計算で3~5人に1人に上るところもあった。
大学病院は人件費を抑えつつ人手不足を補うため、無給医を悪用していた。無給医は他の病院で当直などのアルバイトをして食いつないでいるが、当然、過重勤務になる。
全国医師ユニオンは、7月に「無給医問題シンポジウム」を都内で開いた。民間病院に勤務しながら、都内の大学病院で週1日、無給で外来診療をする男性医師がこう訴えた。
「片道約2時間半かけて大学病院に通うが、交通費すら支給されていない。無給医を辞めたいと教授に掛け合うと、関連病院を含めて自分を採用してくれる先がなくなると言われた。文科省に相談したが、『大学と直接やり取りするか労働基準監督署に相談するように』と言われた。文科省は、無給医の問題に本気で取り組む気などないのだと思いました」
労基署に相談した後、病院側から、「(診療は)自己研さん目的であり、給与なしで交通費等も一切なし」という内容の契約書を渡され署名を迫られた。応じるしかなかったという。
ある男性医師によると、大学病院で働くが月給は3万円しかない。生活するため月14日の当直のアルバイトも経験した。
「寝不足になるだけでなく、心の余裕がなくなって自己肯定感が低くなる。私は大学院生なので、学費も払わなければならない。同期の勤務医と同じように働いているのに、対価に大きな差がある」
労基署に駆け込みたいが、大学病院医師としてのキャリアが断たれるのを恐れ我慢している。
頼みの労基署も、大学病院への立ち入り調査には消極的だ。労基署の関係者がこう明かす。
「労基署が調査を始めると、大学側が厚労省の医政局に抗議することがある。省内では医政局は労働局より立場が上なので、横やりが入ることもあり得る」
ここまで見てきたように、過労の医師が診察し、経営が苦しい病院は全国にたくさんある。私たち患者・家族はどうすればいいのか。
【危ない病院の見分け方】
・医師が治療法などを丁寧に説明せず、1人当たりの診察時間が短い
・軽い症状でも薬を大量に処方し、費用が高い検査を受けさせる
・医師や看護師の対応が患者ごとに大きく変わる
・規模に比べ診療科目が多く医師が少人数で掛け持ちしている
・医師が看護師らスタッフに高圧的な言動をして雰囲気が悪い
・医師や看護師の入れ替わりが激しく、引き継ぎが不十分
・CTやMRIなどの検査装置が更新されずに古いまま
・病室やトイレなどの掃除が行き届かず清潔感に乏しい
・情報発信に消極的で、手術の実績などが調べてもわからない
・ほかの病院でセカンドオピニオンを受けることに否定的
【患者・家族の対処法】
・利用前にホームページなどで比較する。患者の口コミ情報も参考に
・わからないことや不安な点は、医師に納得できるまで質問
・領収書や明細書は保管し、医療費の中身をチェック
・対応がおかしい場合は改善を求め、転院も検討する
※週刊朝日 2019年9月20日号より抜粋