吉本興業の「経営アドバイザリー委員会」
吉本興業の「経営アドバイザリー委員会」
吉本興業が全芸人と交わす「共同確認書」について説明する川上和久氏=撮影・多田敏男
吉本興業が全芸人と交わす「共同確認書」について説明する川上和久氏=撮影・多田敏男
吉本興業の東京本部=撮影・多田敏男
吉本興業の東京本部=撮影・多田敏男

 反社会的勢力が関わる“闇営業”問題を巡り混迷が続く吉本興業。法令順守や芸人との契約問題などを議論する「経営アドバイザリー委員会」の初会合が、8月8日に同社東京本部であった。会社側は約6千人いる全ての所属芸人について、反社会的勢力と関わらないことを約束する「共同確認書」を交わす方針を示した。

 失われた信頼を取り戻す狙いだが、ギャラの配分問題への対応策ははっきりせず、企業統治のあり方についての議論はこれから。委員会は芸人からの聞き取りも直接しておらず、「芸人ファースト」をアピールできる状況ではなさそうだ。

 委員会は元検察官や元警視庁副総監ら7人の専門家で構成。座長の川上和久・国際医療福祉大学教授(政治心理学)は終了後に会見し、次のような声明を出した。

「吉本は、日本でも有数のコンテンツ企業でありますが、一方で、古い部分も持ち合わせていることは事実です。この際、切り替えるべきことについては迅速に、そして徹底して切り替え、新時代にふさわしい企業体として、グローバルスタンダードに沿ったコンテンツ企業として飛躍していく機会にしていければと思います」

 グダグダ会見で注目された岡本社長は委員会に同席したものの、8日の会見の場には姿を見せなかった。川上氏によると、岡本社長は委員会で、

「吉本が改革を成し遂げて飛躍するためにアドバイスをもらいたい」とあいさつしたという。

 初会合では、反社会的勢力との決別について議論した。会社側は年間約6千件の契約をチェックし、相手先の属性を調べていることを説明。不審な点がある相手とは契約しないようにしてきたという。ただ、芸人が直接相手と交渉する「直営業」(闇営業)もあって、関係を断ち切るのは難しい。

 芸人との契約問題も話し合った。会社側は全員について、反社会的勢力と関わらないことなどを記した「共同確認書」を交わす方針だ。いままでの「専属マネジメント契約」に加え、芸人が自分自身でマネジメントができる「専属エージェント契約」も新たに導入。芸人の仕事量などに応じて、文書での契約を進めていくという。

「6千人タレントがいて実際はほとんど舞台にも上がらず研修にも来ない人もいるが、自分は吉本であると意識している人については、全員と共同確認書を交わす。その上で、今まで口頭でしてきた専属マネジメント契約を結んでいく。タレント個人がマネジメントをする『第3の契約』も用意する」(川上氏)

 吉本が契約書を交わしていないことについては、ギャラの配分などで芸人側が不利になるとの批判が高まっていた。公正取引委員会も、「契約内容が不明確であることを通じて、優越的地位の乱用など独禁法上問題のある行為を誘発する原因になり得る」と問題視。吉本としては新たな契約も導入し、批判を避けたいようだ。

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ギャラの配分などは記載されない「共同確認書」