「仕事がいい気分転換になりました」
こう話すのは、埼玉在住のD子さん(72)。もう20年近くマンション管理員をしている。週5日働くが、3日は午前中の3時間、残り2日は午後の3時間のみだ。
「母の介護を在宅で5年間やりました。1日おきにヘルパーが来てくれましたが、本当に大変でした。家にいるとまいっちゃうときに、3時間の仕事が気分を変えてくれる。仕事のおかげでストレスをため込まずにすみました」
こうした人たちを企業が放っておくはずがない。
例えば日本マクドナルドは7月、ハローワークと共同で「スタッフ体験会」を行った。実際に働いているシニアが体験談を語り、店長が相談に応じた。
マクドナルドでの約4カ月のアルバイト体験について、新井道雄さん(69)はこう語る。
「家にいると生活リズムが崩れるので再び働こうと思いました。とはいっても、午前中だけです。午後にジムで鍛える時間は削るわけにはいきませんから。好きな時間を申告して働けることや、ステップを踏んで段階的に仕事を覚えられるのがいいですね」
現在、マクドナルドには60歳以上のスタッフが全国で約6千人いる。最高齢は富山県の90歳女性。横浜にはアルバイトのリーダーである「マネージャー職」を務める79歳の女性もいるという。
「仕事を覚えるのが楽しい。私もマネージャーを目指しています」(新井さん)
もちろん厳しい家計を守るために働き続けるという、「切実派」もいる。
マンション管理コンサルタントのE男さん(77)は、マンション管理士を筆頭に宅地建物取引士や建築設備検査員など、建物関連の資格を八つ持っている。管理組合のコンサルティングをする傍ら、管理士養成コースなどの講師として教えている。
「資格を取って実務に精通しておいて本当によかったとつくづく思いますね。講師の仕事は月7日ぐらい。もろもろ合わせて、平均で月15万円ぐらいは稼ぎます」
夫婦の年金が月20万円ほどあるというから十分かと思ったら、購入したマンションのローンが残っていて、管理費と合わせると月約15万円。家計を守るのは確かに大変そうだ。