人生100年時代で「長く働く」が一大テーマに浮上している。65歳までは会社が面倒を見てくれるとして問題はその後。どこでどのように働き、そもそも職探しはどうすればいいのか。「いきがい追求」もいいが、“年金ちょい足しワーク”でも生活に余裕が生まれる。働いている人や専門家に実情を聞いた。
元三洋電機(現・パナソニック)のB男さん(69)は、都内のある団体のIT関係の仕事を不定期でしている。技術者の経験をもとにホームページを手直ししたり、ビデオの収録内容をDVD用に編集したりする。
「仕事があるときだけ事務所に行きます。収入は月に数万円のイメージですね。もう7年目ですが、毎年、給与所得控除65万円の範囲内に収まります。従って、給与所得は『ゼロ』のままです」
稼いだお金は趣味の音楽に消えていく。バイオリンやピアノを演奏し、最近はおやじバンドでフォークも楽しむ。
同じく団体勤務のC子さん(70)も、年金ちょい足し派だ。自分の年金に加えて、亡くなった夫の遺族年金を受給している。
東京・青山のマンションで一人住まいだ。長く旅行の添乗員をしていたが、60歳を過ぎて体力的にきつくなり、知人の紹介で団体勤務になった。都心の事務所で日常業務をほぼすべて任されている。
「郵便物の処理があるので、毎朝、事務所に顔を出します。データ打ち込みの仕事が多く、年に2回ある繁忙期には泊まり込みで仕事をすることも。逆に閑散期には午前中に仕事が終わってしまいます。都心でランチを食べて、さっさと帰りますね」
報酬をあてにしていないC子さんが仕事に求める効用は、「引きこもり防止」にある。
「家にいると、近所のコンビニに行くのも面倒になる。働かないと、きっとテレビばかり見て一日が過ぎていく。食べ歩きぐらいしか趣味がないので、とにかく『行くところ』ができるのがいいんです」
高齢者には「きょうよう」と「きょういく」が大事、という有名な警句をご存じだろうか。「きょうよう」は「今日、用事がある」、「きょういく」は「今日、行くところがある」のそれぞれ前から5文字。C子さんにとっての仕事は、まさに「きょういく」なのだ。