今年の5月、30歳になった満島真之介さん。
俳優デビューは9年前、東京芸術劇場で上演されたジャン・コクトー作の「おそるべき親たち」。家族に巣くう魔と欺瞞を描いたこの作品は、4年後に同じ演出、同じキャストで再演されるほどの評判を呼んだ。
「当時の僕は、役者としては新生児のようなものでした。その生まれたばかりの赤子のへその緒を切ってくださったのが、演出を担当した熊林弘高さんだったんじゃないかな、と」
鮮烈なデビュー以降、ドラマや映画、舞台などに引っ張りだこに。とくに舞台は、蜷川幸雄さんが手がける話題作に立て続けに出演した。ところが16年の野田秀樹さん作「逆鱗」を最後に、19年まで、舞台からは遠ざかってしまう。
「舞台は、自分がその時持っているありのままが、剥き出しになってしまう場所です。正直、27歳から29歳までの3年間は、僕自身が自分の全てをさらけ出せるだけの覚悟が持てなかった。今年の春に、『チャイメリカ』という舞台に出演したんですが、この作品を通して、僕の中にあるエネルギーの質に変化を感じた。それまでは、ただ闇雲にカッカと燃えたぎっていて、目には大きな炎のように映るかもしれないけれど、派手なだけで、周囲の人も燃やしてしまうような勢いだった。でも今は、自分で言うのはおこがましいですが、炭火による遠赤外線のように、周囲をじっくり温められるエネルギーになっているんじゃないかと思うんです」