――それまでのギターを手にしたフォーク系の楽曲から、歌謡曲・演歌路線に大きく舵をきる。

 いままでの自分には想像できない分野に入っていくわけなんですよね。あるときチンペイさんにも言われました。「無理したらストレスたまって体にくるぞ」って。だけど僕、もともと三橋美智也さんから入ってるわけですから。歌謡曲も、なんならド演歌だって、すんなり受け入れられるんです。

――87年。6年の活動休止期間を経て、アリスは再始動。以降、折にふれ再始動と休止を重ねることに。いま、全員が70歳になるというタイミングで再始動をした。

 最初の解散を経た僕らは、それぞれの三つの城の城主が集まっているような感覚ですね。もちろん打ち解けてはいるのですが、どこか片意地を張っているような感覚もある。チンペイさんともキンちゃんともプライベートでは全然会わないんです。

 まぁ青春を一緒に過ごした3人が時々集まれるのは、幸せなことですよね。アリスをやる、ということは、その都度、機が熟したときなんです。何周年だからとか、誰かが大変だからという理由で集まるんじゃないのがいいですよね。

 いまは全員が70歳になるというタイミングでの再始動ですが、還暦のときもそうでしたし、阪神・淡路大震災や東日本大震災のときなどもそうです。誰ともなく、一緒に全国回らない?って集まれるようになっていきました。アリスの3人だと強くなれるというか、絶大な力が生まれるような気がするんです。一人じゃできないことが、3人だとできる。

――1990年「恋唄綴り」で日本レコード大賞を受賞。代名詞のようになっている「サンキュー!」という掛け声もこの曲がきっかけだった。

 演歌の人は、絶対こんなこと言わないんじゃないか、と思って叫んでみたら、客席がウワーーって沸いて。これだって。自分らしさというか、やっぱりフォーク出身ですし、自分にしか出せない解放感ですね。あ、「サンキュー・ガール」のサンキューと同じですね(笑)。

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