就活に失敗した若者が開いた「しょぼい喫茶店」。“しょぼい人たち”のための居場所をつくりたいというけなげな志と絶妙のネーミングがウケているが、起業の背景にはこれまた絶妙のSNS活用術があった。「理屈にあっていてシニアでも学べることが多い」とする専門家もいる。
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東京・高田馬場から電車で約10分。西武新宿線「新井薬師前駅」から徒歩5分の雑居ビル2階に、その喫茶店はある。店名はずばり「しょぼい喫茶店」。カウンター7席に机のないソファ席があるだけの本当に小さな店だ。店主の池田達也さん(25)が言う。
「最初は店のコンセプトを伝えるために『しょぼい喫茶店』を使っていましたが、知られるにつれて定着してしまって……。それならと、店名もこれにしたんです」
就活に失敗してから喫茶店づくりを決意し軌道に乗せるまでを、この春、『しょぼい喫茶店の本』(百万年書房)にまとめた。
「別にネットやスマホが得意だったわけではありません。人並みです」
と言うが、本の前半はSNSのツイッターを使って次々に幸運を呼び込み短期間に喫茶店をオープンさせる、ある種、爽快な「起業物語」だ。
池田さんは上智大卒。大学ではアルバイトも部活もカナダへの留学もうまくいかず、話す中身のない学生生活を送ってしまう。このため2017年春の就活では落とされ続けた。
自己嫌悪に陥り死ぬことさえ考えたが、ツイッターを通じて人生の師匠とでも言うべき人を複数知る。とりわけ少額での「しょぼい起業」を提案、実践していた「えらいてんちょう」さん(以下、えらてんさん)に大きな刺激を受けた。そして「自営ならできるかも」と喫茶店経営を考え始める。
「以来、えらてんさんのツイッターやブログはひたすらフォローしました。就職できなくてもやりようがあることを示してくれていましたから」(池田さん)
17年秋からは開業資金をためるため、新宿の喫茶店でアルバイトを始めた。えらてんさんのツイートを通じて若き実業家「カイリュー木村」さんも知った。