そういう最中、私は冒頭の男性に出会ったのだった。彼の話には続きがある。娘との対話に感心し大きく頷いた私たちに(そこには女性が数人いた)彼は、「きれいごとを話したかもしれない」と言い、「やはり話さなくてはいけない」と自身の買春の話を始めたのだ。彼の職場には先輩男性社員が新入社員を風俗に連れていく風習があったという。

「嫌でした。でも嫌と言ったら、そこにいられなくなる。だから嫌と言いませんでした」

 ああ、こういう男性の#MeTooもあるのだと思った。性暴力が蔓延する社会とは男の性も軽く扱われている社会なのだ。嫌だ。その一言をもし言えていたら……。変えられない過去に葛藤しながら、それでも未来を変えるために今日話す。それが今、私たちに必要な時間なのかもしれない。

週刊朝日  2019年7月19日号

暮らしとモノ班 for promotion
大谷翔平選手の好感度の高さに企業もメロメロ!どんな企業と契約している?