「いろいろな要因が重なって被害は限定的でしたが、もし同規模の地震が東京や大阪で起きたら、もっと大きな被害になるはずです。極短周期の地震は、地盤の弱いところで起きると土砂災害や液状化の被害はむしろ大きくなります」

 津波の被害もなかったが、本来、日本海で起きる地震は津波の被害を伴う危険性が高い。震源が陸地に近いため、地震発生から津波が到達するまでの時間が非常に短いからだ。

「大きな津波が起きる要因は、海を震源とし、M7.5以上で、震源の深さがおよそ40キロより浅いことです。M7.7だった日本海中部地震では、早いところでは8分で津波が到達しています。死者104名のうち100名が津波による犠牲者でした。地震発生がちょうど正午ごろで、秋田県男鹿市の海岸に遠足に来ていた小学生たちは揺れが収まり、安心してお弁当を広げていた時に津波が襲いました。児童13人が犠牲になるという痛ましい出来事があったのです」(古村氏)

 北海道南西沖地震の際は、地震発生からわずか2~3分で奥尻島に津波が押し寄せている。日本海東縁部一帯で地震が起きたら、とにかく一目散に避難する必要があるのだ。

 今回の地震をもたらした日本海東縁部は糸魚川‐静岡構造線につながるとされ、その延長線上には南海トラフがある。はたして南海トラフ地震を誘引する可能性はあるのだろうか。

 前出・島村氏が警告する。

「南海トラフへの直接的な影響はないと思いますが、次にどこで大地震が起きるかはまったくわかりません。日本列島は火薬庫の上にあるようなもの。いつ、どこで起きても不思議ではありません。首都圏もしばらく大きな地震が起きていないのが不気味です。首都圏も危ないと思います」

 95年の阪神・淡路大震災が起きる前は、東海地震が危ないと言われていた。地震の危険度は全国どこも変わらず、予知など不可能ということだ。前出の古村氏は、地震に対する備えで最も重要なのは「家を強くする」ことだと説く。

「多くの家屋が壊れた本地震などでも、新しい耐震基準を満たした家は被害が少なかったのです。家を耐震補強し、家具が倒れてこないようしっかり固定することが必要です。水や非常食、懐中電灯など地震が起きた後の備えも大事ですが、まずは地震から命を守らなければなりません」

 家の補強工事は経済的な負担が大きく、後回しにしてしまいがちだ。だが、防災グッズを取り揃えても、壊れた家の下敷きになって死んでしまったら、何の役にも立たないのである。

(本誌・亀井洋志)

※週刊朝日2019年7月5日号に加筆

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