その転機が、2015年1月の安倍総理の中東訪問とその後の後藤健二さん殺害事件だ。後藤夫人とIS(イスラム国)の身代金交渉中に、エジプトで、「ISと闘う周辺各国に2億ドル支援する」と宣戦布告した安倍総理の発言は、世界中のイスラム教徒に強烈な印象を残した。「日本は変わった。米国とともにイスラムと戦う国になった」と。
テレビ朝日の「報道ステーション」は、その直後のチュニジアのテロ事件で、犯人たちが、日本人を探していたという被害者の夫の証言を放送した。翌年のダッカのテロ事件では、日本人と言えば助かると信じて「I am Japanese」と叫んだ日本人が射殺されたと報じられた。政府はひた隠しにするが、もはや、「日本人だからこそ」殺される時代が始まっているのだ。
今回のイラン訪問は、そうした中東の人々の意識の変化を明らかにしたが、年金問題で、これがかき消されてしまった。
安倍外交は、日本の平和ブランドを崩壊させている。それをしっかり頭に刻んで、投票に行くべきだ。
※週刊朝日 2019年7月5日号