供養祭の参加者と話す中で、津村さんは、ほとんどの飼い主がペットのことを「自分の家族」と表現することに気づいた。
「犬や猫はだいたい15歳前後で亡くなることが多い。飼い主の皆さんにとっては、愛しいわが子に先立たれたようなものです」
こうした飼い主の心情を知り、常福寺では6年前から「人とペットが一緒に入れるお墓」を整備した。
現在、墓石タイプの霊園150区画のうち、8割は埋まっているそうだ。また、樹木葬墓地も250区画中100区画ほど売れている。そのうち30区画ほどは、実際に人とペットが一緒に眠っているという。
「ここ2年は『ペットと一緒に入れるから』という理由でお墓を購入される方が多いですね。6年前は全体の1~2割だったのが、今では半数近くに上ります」
ペット葬の歴史と仏教界の動向をまとめた『ペットと葬式』の著者で、ジャーナリスト兼僧侶の鵜飼秀徳さん(45)は、「居住空間の変化がペットの“家族化”をうながした」と指摘する。
「数十年前まで、ペットは庭先で飼うのが当たり前。特に犬は“番犬”としての役割を与えられていました。ところが昨今の小型犬や猫ブームによって室内飼育が増えたことで、人間とペットの主従関係が薄れた。これによりペットは、家族内のマスコットキャラクターのような存在になりました」
実際に、一般社団法人ペットフード協会発表の「全国犬猫飼育実態調査」によると、犬の室内飼育の割合は年々増加。04年時点で60.1%(2人以上世帯)だったのに対し、18年は85.7%と、14年間で約25ポイント上昇した。
「特に都市部では、退職後に一軒家からコンパクトなマンションに住み替える高齢者も増えた。そこでペットを室内飼いして、新しいわが子のような存在になるケースもある」(鵜飼さん)
その一方で、ペットの埋葬に関しては、寺院・霊園側の意識や環境整備が追いついていないのが現状だ。
常福寺住職の津村さんによると、ペットの火葬だけはしたものの、一緒に入れるお墓が近くに見つからずに相談に来る人が圧倒的に多いそうだ。