


川崎市で発生した19人殺傷事件。バスを待つ児童らに包丁を持った岩崎隆一容疑者が襲いかかった。こうした無差別殺傷は、東京・秋葉原の事件など過去にもあり、残念ながら完全に防ぐのは難しい。現場に居合わせたときに私たちに何ができるのか。一人でも多くの命を救うための方法を探った。
無差別殺傷事件に限らず、多くの人が傷つき倒れている現場に遭遇すると、誰しも身動きできないことがある。今回の事件でも、現場に近づけなかったという人が複数いた。
67歳の男性は、血まみれの被害者が横たわっているのを見ると、自分の体が止まったという。
「被害者の顔が自分の方を向いていて、目が合いました。次に進めなかった」
泣き叫ぶ女児を目にした近くに住む25歳の男性も、「犯人が確保されたとはっきりするまでは家に戻って出なかった」という。
訓練を受けた警察官や消防士らでないと、悲惨な現場で落ち着いて行動するのは困難だ。犯人が確保されるまでむやみに現場に近づかないことも、正しい判断だといえる。すぐに救命活動に協力しなかった人たちを批判することはできない。
それを理解した上で、もし、被害者のそばに駆けつけることができたなら、どうすべきか。
今回は警察から連絡があって救急隊が現場に到着するまで、10分ほどかかっている。川崎市消防局によると、同市の救急車の平均到着時間は8分ほど。救急隊員が来るまでにできることとして、止血や胸骨圧迫(心臓マッサージ)がある。被害者がパニックにならないよう、声をかけて勇気づけることもできる。今回の現場でも、こうした救命活動に協力した人がいたという。
川崎市消防局は胸骨圧迫(心臓マッサージ)の重要性を指摘する。
「胸骨圧迫が必要なのは心臓が止まっている人なので、やる、やらないが生死に関わります。救急車が到着までに手を貸してもらえるのはありがたいし、心強い」(担当者)
止血も重要だ。成人では、全身の血液の3分の1以上が失われると命の危険がある。元陸上自衛隊員(衛生官)で、愛知医科大学非常勤講師の照井資規さんはこう指摘する。