新鮮な鰯を使った「鰯つみれ鍋」(2400円)は名物。締めに追加で注文したうどんを入れれば、魚のうまみを堪能できる。旬の刺し身や炭火焼き、自家製薩摩揚げなど、魚好きを飽きさせない献立がずらり。銘酒も揃い、香り豊かな裸麦を使った小泉武夫氏プロデュースの焼酎「裸の麦をつかまえて」(写真)も味わえる。税別
【酒の肴に絶品の鍋 「奈加野」の「鰯つみれ鍋」の写真はこちら】
【奈加野】/東京都渋谷区宇田川町31-3 田中ビル2F(営)11:30~13:30L.O. 17:00~22:30L.O.(休)日 (撮影/写真部・片山菜緒子)
著名人がその人生において最も記憶に残る食を紹介する連載「人生の晩餐」。今回は、農学博士・小泉武夫さんの「奈加野」の「鰯つみれ鍋」だ。
* * *
私は大衆的な店が好き。「安くておいしいものを食べさせてあげよう」といった気構えの店はわくわくします。こちらもそんな一軒です。通い始めて25年くらいは経つでしょうか。なんといっても目利きが仕入れた新鮮な魚にいつでもありつける。これが最大の魅力です。
刺し身もいいですが、私のおすすめは鰯のつみれ鍋。鰯は足が早いでしょ。だから臭みが出やすい。しかしこの店は、とびきり新鮮なネタをつみれにし、竹筒に詰めて出してくれます。これをヘラでギュギュッと押し出し鍋に入れると、ぷかっと団子が浮いてくる。箸でかき分け、かき分け、最初はつみれだけを引っ張り出していただきます。ホクホクとした食感と濃厚なコクがたまりません。酒の肴に最高。焼酎や辛口の純米酒がよく合います。鰯のうまみをたっぷり吸った野菜や豆腐もじつにうまい。そして最後はうどんを追加し、だしまで余すことなくいただきます。おいしいものを食べると心と体の糧になる。まさにそんな鍋ですね。
(取材・文/沖村かなみ)
「奈加野」東京都渋谷区宇田川町31−3/営業時間:11:30~13:30L.O.、17:00~22:30/定休日:日曜
※週刊朝日 2019年6月7日号