ミッツ・マングローブ/1975年、横浜市生まれ。慶應義塾大学卒業後、英国留学を経て2000年にドラァグクイーンとしてデビュー。現在「スポーツ酒場~語り亭~」「5時に夢中!」などのテレビ番組に出演中。音楽ユニット「星屑スキャット」としても活動する
ミッツ・マングローブ/1975年、横浜市生まれ。慶應義塾大学卒業後、英国留学を経て2000年にドラァグクイーンとしてデビュー。現在「スポーツ酒場~語り亭~」「5時に夢中!」などのテレビ番組に出演中。音楽ユニット「星屑スキャット」としても活動する
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一般参賀の天皇皇后両陛下の様子 (c)朝日新聞社 (※写真はイメージ)
一般参賀の天皇皇后両陛下の様子 (c)朝日新聞社 (※写真はイメージ)

 ドラァグクイーンとしてデビューし、テレビなどで活躍中のミッツ・マングローブさんの本誌連載「アイドルを性(さが)せ」。今回は、「元号」を取り上げる。

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 改元の瞬間は、家でひとりNHKを観て厳かに過ごそうと決めていたのですが、4月30日から5月1日にかけてのテレビ各局を始めとする世間のノリは、想像以上にお祭り状態。勝手に『ゆく年くる年』的な感じだろうと信じ込んでいたNHKですら、むしろ率先して『非・厳か系』の番組を放送しており、刻一刻とカウントダウンが進む中、地方のホテルで闇雲にリモコンを押しまくるかの如くザッピングを繰り返していたら、「あと5秒で令和」というタイミングで間違えてテレビを消してしまいました。「うわー!」と大声を出しながら再び点けたものの、なぜか映し出されたのは放送終了の放送大学(12チャンネル)。しかもリモコンがうまいこと反応してくれず、その時点で令和は20秒ぐらい過ぎており、結局は厳かさの欠片もない改元を散らかった部屋で迎えた次第です。

 さて、此度の御代替わり。元号の名のもとに暮らしを営む国民ひとりひとり、そしてその象徴であられる天皇ご一家との関係性や想いを改めて噛み締め、たとえ皇室に対しての熱量が高くない人たちにとっても、『天皇制』という日本独自の君主制を、理屈ではなく肌身で実感できたことは、大変ありがたい機会だったと思います。それは紛れもなく、象徴天皇のお立場とそのお務めに最後までご懸命に、そしてご丁寧に向き合われた上皇上皇后両陛下のご尽力、さらには新天皇皇后両陛下のご覚悟の賜物にほかなりません。

 世の中には常に様々な『時代』が交差・混在しています。それでも日本には『元号』という拠り所が存在するお陰で、私たちは日本人ならではのドメスティックな時間の流れや節目を保ち続けられています。グローバル化やボーダーレス化が急速に進み、視野や行動範囲が広がれば広がるほど、自分が身を置く場所や時節を把握することは大事です。多種多様な時代観に流されたりほだされたりせずに、しかも宗教や政治的権力の下ではなく、自国の『歩み』を全国民が共有できているというありがたさ。

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