「西暦の方が便利だ」と言いながらも、日本人がこれだけ『元号』に寄り添った暮らし方ができているのは、昭和敗戦以降の皇室が粛々と国民の象徴たるお姿を示し続けてくださっているからでしょう。いまだ日の丸や国歌にネガティブな印象を抱いてしまう傾向がある中で、『元号』だけには極めてニュートラルな存在感があります。そのニュートラルさこそ、『平成』が成し遂げた最大の功績です。平成は最初から最後まで天皇が『象徴』であった初めての時代でした。きっと時間が経つほどに、この平成30年間の意味がいかに大きなものであったのかを、改めて日本人は知っていくのだと思います。
私は子供の頃から皇室が好きです。個性や個人感情ばかりを優先して生きてきた自分とは真逆の、粛々と様式に法(のっと)ったお務めの上に成り立っているお姿は、ただただ美しく尊い。極端な話、私のような人間は、皇室という『抑制された様式(コンサバティブネス)』があってこそ、『異形』として世の中に存在できているのだと思っています。
このありがたい気持ちと時代がこれからも続いてゆくことを願うばかりです。そして雅子皇后陛下におかれましては、畏れ多くも、もっと紫や濃赤といったお色を颯爽とお召し頂きたく存じます。
※週刊朝日 2019年5月24日号