衝撃的な死を遂げた、シンガー・ソングライター尾崎豊。あれから27年。残された作品の数々は、多くの人々に影響を与え続けている。かつて尾崎と二人三脚のように作品を紡ぎだした音楽プロデューサーと、父と同じ道を歩む息子。ふたりは力を合わせ、“尾崎豊”の伝承を志す。
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「尾崎が死んだ!」。当時、まだ学生だった自分の周りでも、彼の死は大きな衝撃だった。
1992年4月25日、シンガー・ソングライター尾崎は、26歳の若さでこの世を去った。東京・護国寺で行われた追悼式には、雨の中4万人近い参列者が列をなした。
「15の夜」「卒業」「I LOVE YOU」……数々の名曲は、かつてのファンばかりでなく、現在も新しいファンを獲得し続けている。尾崎の曲をカバーするアーティストも多い。
尾崎が世を去る3年前、89年の夏、長男・裕哉が誕生した。
記憶の中にはほとんど存在しない父。しかし、「尾崎豊ばかり聴いてきた」と、裕哉は語る。成人した彼は、父と同じミュージシャンになり、2016年にシングル「始まりの街」をリリースする。同年の音楽特番では、同曲と父の代表曲「I LOVE YOU」を歌い、話題を集めた。その話題はやはり、尾崎豊に「似ている」「そっくり」という比較や感想が多い。親と同じ道を歩む子には、避けては通れない運命だ。そこに抵抗を感じることはなかったのだろうか。そう聞くと、裕哉は、「なかったですね」と断言した。
「僕はずっと尾崎豊の歌を聴いてきたファンでもありますから、似てると言われて光栄なんです。似てると言って喜んでくれる人たちのために、もっとしぐさや口調も意識したほうがいいのかなとも思いますが、覚えてないですからね(笑)。多くの人の言う『似てるね』は、横顔が似てるね、声が似てるねといった、表面的な部分だと思いますけど、外見が尾崎豊に似てるんだったらきっとカッコイイってことでしょうからね。そこはありがたく受け止めておきます」