北原みのり(きたはら・みのり)/1970年生まれ。作家、女性のためのセックスグッズショップ「ラブピースクラブ」代表
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イラスト/田房永子
イラスト/田房永子

 作家・北原みのり氏の週刊朝日連載「ニッポンスッポンポンNEO」。先日の「性暴力と性暴力判決に抗議するスタンディング」について言及する。

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 去年の8月、東京医科大の入試差別がわかったとき、いてもたってもいられなくなり、「明日、東医に集まりましょう」とネットで呼びかけた。何をすると決めていたわけじゃないけど、翌日に100人近くが集まり、自然にそこは、女性としての生き難さを語る場になっていった。そしてその晩から私のもとには「東医に落とされた」という女性たちから連絡が入り始めた。

 声をあげれば届く。その実感を得ながらも、あのとき私が思ったことがある。

「もしこれが性暴力問題だったら、こんなに人は集まらず、メディアは報じず、当事者とつながることはないだろう」

 絶望していたのだと思う。入試差別は数値化されたわかりやすい性差別だ。だから社会の声になるかもしれない。でも性暴力は違う。被害者が声をあげれば「魂胆があるのだろう」「被害者の自己責任だ」と潰す声があがる。世論は常に、被害者と加害者を対等に並べ遠巻きに観察し、「どちらが嘘をついているのか」と監視する。そんな国で#MeTooは始まらない。そう思った。

 今年に入ってから、女性が抵抗できない状況で性暴力を受けても、被告が無罪になるケースが相次いでいる。「推定無罪ですよ」「無罪判決を感情的に批判してくれるな」と牽制する法律の専門家もいるけれど、行為の事実が認められているのに、加害者の故意が認められないと罪に問われないことに、「そうなんですね~」と納得することは、やはりできない。

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