その後、ソウル/ジャズへの傾倒を深め、全米7位のヒットを記録した「ヘルプ・ミー」を含む『コート・アンド・スパーク』(74年)はベストセラーに。さらにジャズへの傾倒を深め、社会問題をテーマとした作品なども生んできた。

 バースデイ・セレブレーションの両日の公演は2部構成で、22曲が披露されたようだが、ライヴ盤には16曲とボーナス・トラック1曲の17曲が収録されている。

 アルバムの幕開けはロス・ロボスをバックにチカーノ・バンドのラ・サンタ・セシリアのラ・マリソウルが歌う「夢の国」。ジョニのブラジルへの旅行体験をもとに書いた曲をにぎやかなラテン調で。とはいえ、どこかシニカルな趣も漂う。

 ついでジョニの曲を積極的に取り上げ、ジョニのアルバムにも参加してきたチャカ・カーンが「ヘルプ・ミー」で、ジャジーなアレンジをバックにソウルフルな歌を披露する。

 そしてダイアナ・クラールがピアノの弾き語りで歌うのは「アメリア」。ジャズ・ドラマーとの恋の終わりのあと、砂漠への旅で思い浮かんだのは、女性初の大西洋単独横断飛行を成し遂げたアメリア・エアハートのこと。ダイアナは先行きの見えない不安を淡々とした表現で描きだしている。もう一曲、ボーナス・トラックとして収録されたダイアナによる「バラにおくる」も味わい深い。

 「コート・アンド・スパーク」を歌うノラ・ジョーンズ、今年のグラミー賞で最優秀アメリカーナ・アルバム賞を獲得したブランディ・カーライルの「あなたのもとへ」からもジョニへの敬愛ぶりがうかがえる。

 ルーファス・ウェインライトが歌う「オール・アイ・ウォント」「ブルー」はいずれもジョニのジェイムスとの恋愛体験を背景にした歌だ。後者はドラッグにむしばまれていたジェイムスを見守るジョニの心情が浮き彫りにされている。ルーファスは絶妙なアレンジをバックに恋愛の心理を巧みに描きだす。

 本作で唯一、ジョニ以外の曲なのがグレアム・ナッシュが歌う「僕達の家」。グレアムが語るに、決して平凡ではなかった二人の関係だが、心休まる時もあったジョニとの貴重な思い出をグレアムが書き、クロスビー・スティルス・ナッシュ&ヤングのアルバムに収録され、ヒット曲にもなった。今となっては枯れたグレアムの歌声が時の流れを感じさせるが、観客への唱和の呼び掛けに、思わず口ずさんでしまう。

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ジョニがグレアムとの恋の終わりを歌った曲