西武ライオンズの元エースで監督経験もある東尾修氏は、野球の日本代表が「常設化」されて5年以上がたち、その存在意義を議論したいという。
* * *
3月9、10日に京セラドーム大阪で、侍ジャパンの強化試合となるメキシコ戦があった。結果は1勝1敗。結果うんぬんを問うつもりはないが、選出メンバーがトップチームと言える選手ではなかったことには言及したい。
2020年の東京五輪に向け、選手の選択肢を広げたいというのは建前だ。11月にプレミア12があり、20年夏には東京五輪があるから、主力選手に負担をかけられないというのが本音だろう。ファンならば、誰もがわかっている。日本プロ野球選手会とNPBの間で、代表選手の待遇改善、負担軽減について事務折衝も続いている。ただ、これだけ選手を集められないのであれば、果たして試合をする意味があるのだろうか。侍ジャパントップチームに選出されるというステータスは保たれないと思う。侍ジャパンを収入源の一つと割り切ってしまえば、また別の見え方ができるのだろうけどね。
私も投手総合コーチとして参加した13年の第3回WBCの後に、代表は常設化された。「常設化」というだけで、果たして日本の野球の頂上にいるトップ選手のレベルアップに何ができたか。常設化から5年以上が経過した。従来のように3月と11月に適当な相手を見つけて、選手を集めて行う試合は、どんなに動機づけをしようとも、「強化」とは言いがたい。
年々、3月の強化試合の選出メンバーに実績がある選手が出なくなっているという事実を受け止め、代表のあり方をいま一度考えるべきだ。国際大会の本番だけしか本当のスター選手が集められないのが現状であるのならば、逆にその間の強化の方策はあるのか。指導者となり得るOBは世界の最先端の野球をどこまで勉強しているか。そのために、援助はどれだけできているのか。プレミア12や東京五輪が近づいてきた時だからこそ、「常設化」の存在意義を考えないと、大会終了後が不安である。