「長生きで老後資金が枯渇するリスクを感じる人にとって、一生涯もらえる年金を増やせる繰り下げ受給は、税負担や保険料が増えることを差し引いても魅力的です。待ってみて無理と思えば、いつでも年金の受給開始を請求できるので、チャレンジの価値はあります」(同)

 繰り下げをやめて年金を受け取りたい場合、年金事務所で請求すれば翌月分の年金から受け取れる。年金は偶数月の15日に、前月と前々月分が支給されるしくみ。3月に請求すると4月分と5月分が6月15日に振り込まれる。ギリギリまで我慢すると生活費が足りなくなるので、3~4カ月は余裕をみよう。繰り下げは最低1年からで、1年未満の場合は増額されず本来の受給額をさかのぼって請求することになる。

 60代前半の特別支給の老齢厚生年金を受給している人は、65歳の誕生月に65歳からの年金の請求手続きの書類が送られてくる。繰り下げ希望のチェック欄があるので、老齢基礎年金あるいは老齢厚生年金いずれか一方を繰り下げたい人は、該当欄をマルで囲んで返信しよう。両方繰り下げたい人は返信しなくてよい。

 65歳からの人生、適度に働きつつ、オトクな制度を賢く使った生活を送りたい。(ライター・森田悦子)

週刊朝日  2019年3月29日号