平均年齢がまだ20代という北欧の若手クァルテット
Fractal / People Are Machines
平均年齢がまだ20代という北欧の若手クァルテットを紹介したい。すでに一枚看板で知名度を高めているメンバーが在籍しており、見逃せない本邦デビュー作である。
始まりは2004年秋だった。コペンハーゲンのリズミック音楽院に通う学生仲間であるスウェーデン出身の3人とノルウェー出身の1 人がグループを結成。ピープル・アー・マシーンズ(PAM)という一風変わったバンド名をつけ、学業と並行して活動をスタートさせた。最初に転機が訪れたのは2007年で、デビュー作『People Are Machines』(Calibrated)をリリース。テナー・サックス+ピアノ+ベース+ドラムスのアコースティック・クァルテットは、全曲メンバーのオリジナルを揃え、気合の入った全員のアグレッシヴなプレイが圧巻の演奏だ。PAMは同年10月にスペインの《ゲチョ・ジャズ・フェスティヴァル》に出演。バンド・コンテストのファイナリスト4組に勝ち残り、審査員賞と観客賞のベスト・グループをダブル受賞した。またピアノのマグナス・ヨルトは最優秀ソロ・アーティストにも輝いている。スペインの人々を熱狂させた同祭でのステージは、第2弾のライヴ・アルバム『Jazz Getxo』(Errabal)で体験可能だ。PAMは他にもノルウェーのタレント・コンペティション「ジャズイントロ」で第2位を獲得。北欧各国やロシアのジャズ祭への出演実績がある。
冒頭の話を続けると、ヨルトは個人名義で2作品を発表した後、2009年の初来日公演をきっかけとして日本との関係を深め、3枚の国内リーダー作を制作。6月の東京公演も盛況だった。マリウス・ネセットは2005年にジャンゴ・ベイツのビッグバンドに抜擢され、ベイツ、アントン・イーガー参加の2011年発表リーダー第2弾『Golden Xplosion』(Edition)が、欧州の専門誌で高い評価を得ている。
PAMの第3弾となる本作は全員が2曲ずつ持ち寄ったオリジナル集。ペーター・エルドがエッジの鋭いピチカートでビートを刻む#1、ジョン・コルトレーンからマイケル・ブレッカーまでを吸収したネセットのプレイが逞しい#2、確かなテクニックでヨルトがヨーロピアンの洗練を発揮する#3、複雑なリズムをこなしながらイーガーがバンドを鼓舞する#4と、バランスのとれた4人のスキルが一体となって大きなエネルギーを生み出しているのがPAMの魅力だ。アメリカのメインストリームを踏まえた北欧ユニットは、ライヴでも体感したいと思わせる音楽性に溢れている。
【収録曲一覧】
1. 8-Bit Moments
2. 21/8-27/8
3. Seeding
4. The Rapport
5. Far Away
6. Zoodiakk
7. Catch This Cat
8. Aud Lhoc
ピープル・アー・マシーンズ:People Are Machines(group)
マグナス・ヨルト:Magnus Hjorth(p)
ペーター・エルド:Petter Eldh(b)
マリウス・ネセット:Marius Neset(ts,ss)
アントン・イーガー:Anton Eger(ds)
2008年12月コペンハーゲン録音