死後の手続きのなかでみんなが疑問に思っているのが「お布施」の金額。とりわけ戒名を巡っては、高いものだと数百万円を求められるケースがあり、不安に思う人も多い。最近では費用がわかりやすい“明朗会計”のサービスや、生きているうちに授かる「生前戒名」も広まり始めている。今どきの戒名事情を探った。
「四十九日の法要の費用として70万円の請求を受けた。戒名料のようだが高額であり納得できない」
こんな相談が、全国の消費生活センターに、毎年のように寄せられている。
戒名(または法名)とは一般的に、故人が仏弟子になった証しとして僧侶らから与えられるものだとされる。宗教学者で『戒名は、自分で決める』(幻冬舎新書)の著書がある島田裕巳さんはこう指摘する。
「戒名は、僧侶が出家する人に付ける名前だから、本来は生前与えられるものだった。でも実際には、その人がどう生きてきたかを戒名に盛り込む傾向があるので、死んでからでないと付けにくい。本来の意味合いとは変わってきているのです」
今のように戒名が細かくランク付けされ、亡くなってからお布施の金額によって事実上“買う”ようになったのは、そんなに古いことではなさそうだ。
不透明だと指摘されてきたお布施のあり方に一石を投じたのが、お坊さん派遣サービスの「おぼうさんどっとこむ」(東京都稲城市)。林数馬社長は現役の僧侶でもあり、葬儀などにかかる費用を透明化すべきだと感じていたという。
「友人からこんな相談を受けたことがあります。『父親の葬儀に菩提寺から500万円のお布施を要求され、やっとかき集めた300万円を渡したところ、足りないとして葬儀を放棄された』。こんなおかしな状況を改めるためにも、適正な費用を公表すべきだと思いました」
ホームページで費用を明示すると、仏教のお布施の精神に反するなどとして、仏教界から批判された。それでも林さんは、みんなが納得して葬儀・法要を営めるようにするためにも、「費用は適正でなければならない」と訴える。