なんせ面白いとかすごいってことが、ゆっくり咀嚼できないままどんどん行っちゃう。さすが「いだてん」、足が速い。褒めてます。

 そんななんやかんや抜きでシンプルに見れば、これは「日本人初めて物語」だ。坊主頭で痩せこけてゴツゴツして、野暮で真面目な四三は、まさに昔の日本人。

 四三が見る初めての東京。初めてのマラソン。初めての西洋。初めてのオリンピック。そのドキドキやワクワクの顛末は、教科書には出てこないけれど、やっぱり日本人の歴史なのだ。

 そしてタイトルに「東京オリムピック噺」とあるように、登場人物がみな落語の長屋の住人みたいで、どこかすっとぼけている。これは大河ドラマというより、むしろ大河落語なのだ。

 ものすごく豪華な「超入門!落語 THE MOVIE」(9話にはこの番組のパロディー場面があった)かと思うと、NHKの太っ腹さに震えがくる。

 この際、視聴率など気にせず、とことん好き勝手やってほしい。だって語り手が志ん生なんだから。ナレーションの途中で居眠りしたっていいじゃない。

週刊朝日  2019年3月22日号

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