そんな事情を背景に、農林水産省は他国に比べて残留農薬基準が緩いことを熟知している。品目別、農薬別に他国との残留基準値の対照表を作り、サイト上でも公表。農産物の輸出業者に、相手国の基準を守るよう注意を呼びかけている。

 ネオニコチノイド系農薬の使用を禁止したEUなどへの輸出用には、それに合わせた厳しい基準を求めながら、国内消費者には緩い基準で農薬の残った食品を食べさせる。言ってみれば、それが政策になっている。

 一部の市民団体や農業関係者は、ネオニコチノイド系農薬の空中散布などに反対する運動に取り組んでいる。

 日本弁護士連合会は、「ネオニコチノイド系農薬の使用禁止に関する意見書」を17年12月に公表した。「子どもの発達への影響が強く懸念されるにもかかわらず、日本ではいまだ予防的措置がとられていない」と指摘。農薬の新規登録を保留することや、暫定的に使用禁止を命ずることができるよう法改正することなどを求めている。

 一方で、子どもの発達障害には、様々な要因が考えられる。虐待といった異常な生育環境も、脳の発達に影響を与える。農薬だけが原因だとは断定できない。

 農薬メーカー側は、「定められた用法用量で使用すれば毒性や環境への負荷は低い」などとして、使用禁止には否定的だ。行政側も「安全性は担保されている」との立場で、規制を強化しようとはしていない。

 それでも、ネオニコチノイド系農薬と子どもの脳の関係を指摘する研究があることは確かで、その数は増えている。使用禁止が世界的な潮流になるなか、それに逆行するような日本の姿は、見直すべき時にきている。

週刊朝日  2019年3月15日号より抜粋

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